グラフに示した数値通り、調査を開始した1990年には475万人程度であったパートタイム労働者が、2017年には1539万人あまりと3倍以上に拡大している。比率も12.3%から30.8%に大幅に増大した。

 もちろん、資料の毎月勤労統計調査におけるパートタイム労働者には直接雇用の短時間就労者が含まれ、かつ、フルタイムの派遣労働者は含まれないので、このパートタイムと派遣労働者はイコールではない。また特に近年においては女性や高齢者の労働市場への新規参入増加の影響でパートタイム労働者比率が上がっていることもあろう。しかし、派遣法における2大改悪、すなわち、それまでのポジティブリスト方式からネガティブリスト方式へ変更された1999年改定、および、製造業派遣が解禁された2004年改定の際に、パートタイム労働者比率(折れ線グラフ)が階段状に増加している点はグラフから素直に読み取れる。このことからも、派遣法がパートタイム労働比率増加とは無関係であるとは言えないであろう。

派遣労働者を利用した経営者は悪人か

 そこでよく行われるのは、かような状況を招いた経営者たちは悪人ではないのかという議論である。多くの企業経営者が自企業に都合の良い形で法を利用したために、社会格差の拡大を招いてしまった、彼らは社会悪であるという議論である。

 しかしこれは必ずしもそうとは言えない。

 全ての経営者が、自らの使命として与条件の中で最善を尽くそうとするのは当然のことである。そうでなければ背任行為となりかねないし、経営者としての自己達成感も得られない。そして特に中長期的な経営視点や企業の社会性や使命感などまでに思慮が及ばない経営者が、自身の任期の間だけ無難にこなすことを考え、短期的な目先の数字のみに追われてしまうことは、残念ながらよくあることである。その際、労働者を自社に都合よくモノ(部品)のように使ったり切ったりできるシステム(法体系・制度)が存在するならば、制度設計の本来的主旨に反してでもそれを利用してしまうことも必然的にありうる。そこには徳性や教養もないが、悪意もないのである。