評価対象は、課題論文と人事評価委員会へのプレゼンテーションである。幹部社員のテーマは今の部署が抱える課題へのアプローチ方法や解決法、社員自身が抱える問題点とそれに対する解決法を考えさせるものが中心となっている。

「論文とプレゼンを通じて社員がどのような問題意識をもって、それをどのように解決しようとするかが分かります。課題は、いま会社として社員に考えてほしいことをトップと相談しながら設定しています」(倉茂人事部長)。人事評価の場を、会社が社員に求めているものを示す重要な機会と捉えているのだ。

社長も対象、「360度評価」の徹底ぶり

 3つ目の基準「360度評価」においても、会社が求める社員に求めるものを示すため、多面的に項目を設定している。 幹部社員以上の評価項目は、「業務力」「実力」「指導力」「人間力」の4分類、計12項目。各部門共通だが、求める内容はときとともに変わるため、定期的に見直しているという。

 幹部社員の評価には、一般社員にはない「人間力」という分類があるのも特徴的だ。その評価内容の中には「優れた人柄」という言葉もあり、評価対象に一見えないようにも思える。「人柄」は新卒採用時でも「能力」や「意欲」以上に重視する指標という。どのような考え方なのだろうか。

 その点について倉茂人事部長は「人柄が良い、ということは『他者との関係構築能力』が高いということです。組織で働くうえで人柄が良いかを見るのは当たり前のことです」と説明する。

 同社の「360度評価」の最大の特徴はその徹底ぶりだろう。一般社員は、同僚、部下、上司3人ずつ計9人から、幹部社員は上司や同僚に加え部下全員から評価を受ける。持たされている部署の大きさに応じて、4人程度から最大50人程度の部下から評価されることもあるという。社長も対象で、直属の部下にあたる役員などから評価を受けているというから驚きだ。