仕事が「できる」のに出世できない人がいる。そこそこ仕事ができるのではない。ものすごく「できる」のに出世できないのだ。

 若いときからめきめきと頭角を表し、実績を重ねている。専門知識が豊富で、業界の動向にも通じている。頭が切れ弁も立つ。議論すれば緻密なロジックでどんな相手も説き伏せてしまう。当然、同期から一目置かれ、「あいつは優秀だ」「出世頭だろう」とささやかれている。

 ところが、ある時点からぱたりと伸び悩み、行き詰まってしまう。気が付いたら、周りにどんどん追い抜かされている。役員になる同期がいる一方で、優秀だったはずの彼(彼女)はいつまでも課長のまま。「なんであいつが」と毎日のように恨み言を繰り返し、自分の境遇を呪っている。

 一体、なぜそんなことが起きるのか。それは「できる」人の落とし穴にはまってしまっているからだ。

 人事戦略コンサルティング会社「セレブレイン」の高城幸司社長は、「できる」と言われる人が出世できない大きな理由として、まず「年次によって『できる』の基準がどんどん変わっていくことに気がつかない」ことを挙げる。

 若いときから先頭を走っている人は、目の前の仕事で結果を出すことに全力を傾けている。そのままずっと突っ走っていけばいいと考えている。そのため、「会社では、ある時から知識や行動だけではなく、『考え方』が求められるようになる」(高城さん)ことに気がつかないのだ。

「例えば営業マンならば、ある程度の経験を積んだら、『売り方を若い人に伝える』とか『営業研修用のケーススタディーを作る』『いままで攻めていなかった新しい業界へのアプローチ方法を考える』というように、より幅の広い仕事を期待されるようになります。