中国政治を語るためには、過去と現在を照らし合わせる作業が必須である。習近平はなぜ、前例のないシチュエーションで軍事パレードを実施したのか。なぜ、30万人の兵員削減を約束したのか。歴史的先例にならい、分析することにしたい。
軍事パレードと兵員削減で軍権を確立した鄧小平
先例は鄧小平にある。鄧小平が軍事パレードを閲兵したのは1984年の国慶節で、100万人の兵員削減を宣言したのは1985年であった。
軍事パレードは、建国35年を祝う名目であったが、中途半端な印象は拭えなかった。いずれにせよ、軍事パレードにおける閲兵と、兵員削減の大鉈を振るうことで鄧小平の軍権は確立した。
鄧小平が党内での実権を掌握したのが1978年12月の党11期3中全会であるとすれば、軍の掌握に5年以上を要したことになる。もともと軍を権力基盤にしていた鄧小平にとっても、軍権の掌握は容易なことではなかったことが分かる。
習近平は、政権に就いてわずか3年で鄧小平の前例に並びかけている。その間、反腐敗キャンペーンで徐才厚、郭伯雄という2人の前中央軍事委副主席を汚職容疑で立件するなど、強引ともいえるやり方で軍へのコントロールを強めてきた。
国慶節以外では前例のない軍事パレードを、「抗日戦争・反ファシズム戦争勝利70周年」を名目に実施し、パレード当日のスピーチで30万人の兵員削減を明言したことで、表向きは鄧小平と肩を並べたように見える。