オドロキはそれだけではない。神秘的とはほど遠い、この曲の結末もすごいので、ぜひ『Norwegian Wood(This Bird Has Flown)』全訳も読んでほしい
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Let It Be

 ザ・ビートルズの公式発表曲は全278曲。タイトルや歌詞が分からなくとも、ほとんどが一度は耳にしたことのある曲ばかりで驚く。そんなビートルズの記念すべきレコードデビュー曲は、1962(昭和37)年にEMI系列のパーロファン・レーベルより発売された『Love Me Do』だ。

 “お願いだから僕を愛してくれよ、僕は君を愛してるんだ”と繰り返す歌詞は、若い女性たちのハートを掴むには十分に甘く、プロデュースされたお揃いの髪型とスーツ姿で歌うデビュー当時の4人は正真正銘のアイドルだった。

 それから8年という年月をかけて風貌も曲調も大きく変わっていくわけだが、直球なラブソングから始まったこの伝説のロックバンドの最後のシングル曲『Let It Be』では、人生の大切な教えが綴られ、かつての“甘さ”は一切なくなっていた。

Let It Be
ザ・ビートルズ

 事実上解散する1カ月前の1970年3月にリリースした『Let It Be』には公式な邦題が付けられていない。よく耳にする翻訳は「なすがままに」だろうか。英題、訳ともに意味深い印象だが、タイトルだけではその良さが分かりづらい。というわけで、ここで今一度この曲を解読してみよう。

 一言でいえば、“ビートルズの解散”で苦境に立つポール・マッカートニーの胸の内をしたためた歌だ。クレジットはレノン=マッカートニーだがポールが単独で書いた。ビートルズの末期、修復できないほど皆の心がバラバラになってしまい解散へと物事が進むなか、それでもポールはビートルズの復活を願った。彼の内にある悲しみ、不安、孤独は想像に難くない。そんな状況下で作られたにも関わらず、この曲から放たれるオーラに淀みはなく、それどころか聴く者に勇気を与えてくれるのは、彼自身がある人物に勇気をもらったからだ。その人物とは亡き母、メアリーである。