1カ月休暇を可能にする「属人化」排除の仕組み

「サバティカル休暇」の期間の活動を仕事の「インプット」と捉えれば、企業側にとっても従業員満足を得られる以上のメリットがあると言える。

 しかし、1か月も社員がいなくなって会社の業務が回らなくなってしまわないだろうか。その点について「まったく心配していません」と南氏は言い切る。

 そう言い切る背景には、通常業務のあらゆる過程で、いわゆる「属人化(特定の人に仕事がついていてブラックボックスになっている状態)」が排除されているアトラエの業務運営がある。

 アトラエは、自社メディアを通じた人材紹介を柱として、複数のサービスを提供している。その通常業務は、自社サービスを利用する企業の契約を取る営業担当、サービスのプラットフォームの開発をするエンジニア、サービスのサポート担当、その他管理部門担当などで成り立っている。

 まず、営業フェーズでは、営業支援のCRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理)ツールを導入。顧客情報はもちろん、訪問回数や商談状況の進捗、契約状況などが誰でも確認できるようになっている。メールもCcでチームメンバーと共有。1度訪問した営業担当が休んでいても、他のメンバーが状況を把握して対応できる。

 そして、契約管理や経理などの管理部門に関しても、複数の社員が業務を行えるため、誰か1人が休んでも処理が滞ることはない。サービスサポートも同様だ。

 さらに、開発部門でも、サービス仕様を共有するともに、毎週のミーティングや勉強会を通じて、自分の担当以外のサービス内容も把握。コードを誰でも触れるため、「担当外なのでよく分かりません」といった状況が生じないのだという。

「成果」でも「在席」でもなく「貢献」を評価する

 こうした属人化の排除や情報共有の取り組みは、自分の顧客を手放したくない営業担当者などが協力しないことも想定される。しかし、そうした状況にならないのは、アトラエの仕事に対する評価の考え方にあるようだ。

 南氏は「当社は、(いわゆる売上などの)成果や実績よりも『貢献』に重きを置いています。営業にも個人予算は設定していないので、売上の取り合いにはなりません」といい、会社における成果をサッカーのゴールに例えて説明する。