菅谷 我々が、まさにその世代なわけですが(笑)。
私は、特に読者層を意識したことはありません。ただ登場人物たちの行動や考えは、どうしても自分がこれまでに体験してきたことがベースになる。知らずのうちに、同世代の共感を得られたのかもしれません。
──本書は、日本の農業への警告とも受け取れる部分がありますね。遺伝子組み換え作物によって食の安全性が脅かされるという声はよく聞かれます。そのあたりは、どうお考えでしょうか。
那藤 個人的には、遺伝子組み換えは、活用の仕方で善にも悪にもなると思っています。
植物も育たないような寒冷地や乾燥地に耐える作物を、遺伝子工学によって生み出すことができれば、多くの人を救うでしょう。一方で農薬と作物を同時に開発し、特定の組み合わせでないと収穫が得られない構造を作り出すような事例もある。このような経済的な目的で農業を縛る研究には、賛同できません。
菅谷 ただ私たちは科学者ではないので、「これは間違っている」「こうあるべきだ」という主張をするつもりはありません。小説の楽しみの1つは、世の中のさまざまな思想や考えに触れられることでもある。登場人物たちの葛藤や奮闘を通して、世界の多様さを表せたらいいな、と思っています。
──今後の抱負は? 次作もバイオ系の小説ですか?
那藤 その予定です。舞台は、日本から飛び出すこともあるかもしれません。とにかく、面白い小説を書いていきたい、と思うばかりです。
菅谷 その点は、私も同じです。歴史に材をとった小説などにもチャレンジしていきたいですね。