トマトが枯死する疫病が九州で発生。調査に乗り出した植物病理学者は、この疫病が日本のみならず、世界中の植物に甚大な被害を与えかねないことに気づく。その対策を練るうちに、怪死した旧友の研究が特効薬になりうることを知るが・・・。
宝島社が主催する、第16回『このミステリーがすごい!』大賞・優秀賞を受賞作した小説『感染領域』の売れ行きが好調だ。とりわけビジネスマンの読者を多く獲得しているという。
著者は、「くろきすがや」。広告会社に勤務していた那藤功一(なとう・こういち)氏と、文筆業に携わる菅谷淳夫(すがや・あつお)氏(JBpressの寄稿者でもある)の2人による創作ユニットである。受賞作は初めての共作だという。このユニークな小説はいかにして生まれたのか。創作の秘密を語ってもらった。
手に入る限り読んだ生物学の専門書
──本書にはトマトが重要なアイテムとして登場しますが、そのアイデアはどこから得られたのですか?
那藤功一氏(以下、敬称略) 広告会社に勤務していた頃に、長らくカゴメさんを担当していたんです。トマトジュースやトマトケチャップなどで有名な会社ですから、私もトマトについて勉強しました。
そこでふと「緑色で腐らないトマトがあったら面白いな」と思いつきました。同時に、可愛いトマトがミステリーに題材になりえるのか? と想像したら、わくわくしました。そこを軸に話を膨らませていきました。ただし登場する会社はカゴメとは関係のない、想像の産物です。