これまで、遺伝子組み換え作物・食品の安全性について書いてきましたが、今回は遺伝子組み換え作物の環境への拡散に対する危惧について、書くことにします。
◎遺伝子組み換え作物に関するこれまでの記事
「この世で最も『調べ尽くされた』食べ物とは」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48282
「反対派も下手に批判できなくなった遺伝子組み換え」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47889
遺伝子組み換え作物が環境に拡散し、生物多様性に悪影響を与えるのではないかとする懸念は、根強いものがあります。たとえば、遺伝子組み換え作物が野生で繁殖した上に、近隣に自生している近縁種の雑草などと交配することで組み換えられた遺伝子が移ってしまうのではないか・・・という懸念です。
以前から同じような懸念を科学者たちは抱いていました。しかし、環境への対策は人間相手の安全性対策よりも多少遅れました。というのは、遺伝子の汚染はおそらく起こらないだろうといった考えをもつ科学者が少なくなかったからです。
機能が発揮できない環境では“弱い”
なぜかというと、まず遺伝子組み換え作物は、その名の通り「作物だから」です。一般に農作物は人間が世話をしないと成長・繁殖できません。
たとえば、遺伝子組み換えによって除草剤耐性を付与された大豆やトウモロコシは自然界では無力で、全く強みが発揮できません。
除草剤耐性は、除草剤がまかれる環境、すなわち農地でしか意味がない能力なのです。農地以外ではまったく役立たずの能力なので、もともと栽培種としての弱さもあって雑草や害虫に駆逐されてしまいます。
害虫耐性のある作物も、対象とする害虫以外の虫にはエサになりますし、栄養価が野生品種より高いので仮に実っても今度は野生の動物や鳥が見逃しません。