茨城県つくば市にある農研機構の敷地内で栽培される遺伝子組換え米(2016年8月23日、筆者撮影)

厳戒態勢の遺伝子組み換え米圃場

 農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)という国立研究開発法人があります。茨城県つくば市に、世界中の種を収集保管するジーンバンクという同法人の施設があり、その近くで遺伝子組み換えのコメが栽培されています(冒頭の写真)。植えられているのは「スギ花粉ポリベプチド含有米」(スギ花粉症緩和米)で、スギ花粉症患者の症状の緩和や、その予備軍の発症予防を目的として開発されています。

 申し込めば誰でも見学できますが、初めてここを訪れた方は、その警備の厳重さに驚かれるでしょう。水田に張られているネットは鳥害防止のためでしょうが、鳥以上に人の侵入を対象とした警備が行われています。

 水田の周囲は金網が張られ、外灯や監視カメラも設置されています。侵入者がいたら、すぐに警備員が飛んできます。これが国立の機関でなかったら、網の上に高圧電流を流したワイヤや鉄条網が張られていてもおかしくないでしょう。

 なぜここまで厳重な警備をするのか。過去に試験栽培されていた遺伝組み換え作物を反対運動団体が刈り取ってしまうという事件があったからです。

 遺伝子組み換え作物が日本で話題になったのは、除草剤をかけても枯れない大豆や、害虫の食害を防ぐため虫が食べると死ぬトウモロコシなどが紹介された1996年あたりからです。その頃から、栽培されている遺伝組み換え作物を無断で刈り取るなど、反対運動団体の運動が活発になりました。今もネットを検索すれば、反遺伝子組み換え作物を謳う団体や個人のwebページはいくらでも見つかります。

 ところが、遺伝子組み換え作物を危険だとする主張はいくらでも見つかりますが、たいていは先に挙げた除草剤耐性や農薬的な機能をもつ遺伝子組み換え作物と、主にそうした作物を開発したモンサント社が批判対象となっており、その他の遺伝子組み換え作物の栽培を危険だとする主張はあまりみかけません。

イメージ偏重の裏に隠された多様なメリット

 そうなる理由は、多くの人にメリットをもたらす遺伝子組み換え作物を下手に批判すれば逆に叩かれる可能性が高いからでしょう。

 遺伝子組み換え作物は、除草剤耐性や農薬的な機能を有する作物だけを開発しているわけではありません。むしろモンサントが作る、農薬が関係するような作物は少数派です。