自生したとしても一代限り

 日本でも遺伝子組み換えナタネやダイズが輸入される港の道路周辺では、これらの自生が確認されており、農水省が平成18年から毎年状況を調べています。しかし、自生している遺伝子組み換え作物の成育には連続性がない(去年生えていた所に今年も生えていないなど)など、成育し終わって種を落として繁殖している個体はありません。おそらく輸送トラックのどこかに引っかかっていた遺伝子組み換えナタネが落ちて発芽したものしか生えていないとみられています。

 また、遺伝子組み換え作物の自生地に生えている近縁種も調べていますが、遺伝子が移行している例は見つかっていません。

参照:「『平成26年度遺伝子組換え植物実態調査』の結果について」(農水省)

 農家として言わせてもらえば、ナタネは秋に種をまき、冬に育ち、春に花を咲かせる作物ですので、害虫や雑草の対策が比較的容易な作物です。そんなナタネでこの調子だと、春や初夏に種をまく大豆やトウモロコシでは、まず繁殖は不可能だろうと思われます。

 そもそも道端に落ちているダイズやトウモロコシを見逃すほどカラスなどの野鳥は馬鹿ではありません。農家がダイズやトウモロコシをまいているのを見て、人がいなくなると掘り返して食べるような連中なのです。

「カルタヘナ法」による規制とは

 しかし、環境保護団体は黙っていません。このままで良くないのではないかということで、法を定めようとしたのが1995年です。当初、1999年にコロンビアのカルタヘナで行われた作業部会で議定書が作成される予定でしたが、まとまらなかったため、実際の採択は2000年にモントリオールで開催された生物多様性条約特別締約国会議再開会合でなされました。

 そこで制定されたのが、遺伝子組み換え生物などの使用によって生物多様性に悪影響を及ぼさないように作られた法で、「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」(通称「カルタヘナ議定書」)と言います。

 現在では世界167の国とEU連合がこの議定書を採択しています。事実上、世界標準になっていると言っていいでしょう。このカルタヘナ議定書に従い、日本でも法整備が進められ、日本に輸入される作物だけでなく、栽培される遺伝子組み換え作物にも規制がかかります。

 まず隔離ほ場(絶対に他の作物に影響することのない試験場や研究室内など)で試験され、問題がなければ栽培が許可され、遺伝子拡散防止措置が行われることを条件に栽培が認められます。それでも問題がなければ誰が栽培しても良いということになります。

参照:「カルタヘナ法に基づく生物多様性の保全に向けた取組」(農水省)

 このように、世に出るまでに何段階もの検査をクリアしないことにはいけない仕組みになっているので、素人が想像する程度のことは全て対策済みであると言っていいでしょう。

反対派でさえ見落としがちなリスク

 ただ、それでも全くリスクがないと言うわけではありません。メディアではあまり報道されず、遺伝子組み換え反対論者もほとんど気がついていないリスクがあります。それは微生物やウイルス関係です。