加工性に優れている点など、自分たちの製品の特長について、実際に取引先を回るミャンマー人スタッフたちにしっかり理解させ、彼ら自身の口で中国製鋼材との違いを説明させることによって、丁寧かつ着実な営業を図っている。

南アジアやアフリカ市場も視野に

 商社として、主に東南アジア諸国への鉄鋼輸出を手掛けてきたアール・ケイにとって、このティラワのコイルセンターは、製造業という新規事業への挑戦の舞台だと言える。

 それでも、入社2年目からその最前線に立ってきた笠原さんは、意外なほど肩に力が入っておらず、自然体だ。

 「会社の中で誰も工場を経験したことない以上、年齢は関係ありません。むしろ、吸収力や柔軟性がある分、若くて良かったのかもしれないですね」

 「工場を操業しながら会社を経営し、総務経理もこなすのは、確かに離れ業ではありますが、いたずらに気負えばできるというものでもありませんから」

 こう飄々と語ってみせる胆力には恐れ入る。

 「ミャンマーは雨期が長く、その間は鉄の需要も落ちるので、ゆくゆくはミャンマーを中継地点として、インドやバングラデシュ、さらにアフリカの市場にも出ていけたらいいですね」と夢を語る。

 その一方で、「まずは今できるベストを積み重ねていくだけです」と堅実な姿勢を崩さない笠原さん。

 当面は、3~5年かけてこのコイルセンターを安定稼働させ、足場を固めながらミャンマー国内の鉄需要の伸びを取り込み、向こう10年かけてRKヤンゴンスチールを拡大していく計画だという。

 日本企業の駐在員の中でも飛び抜けて若いリーダーが、大胆さと堅実さを両輪にこのティラワの地でどんな飛躍を見せてくれるのか、期待したい。