そのため、すべて手探りで進めざるを得ず、2015年3月に投資認可を取得した時には心底ほっとしたという。
1年後、工場棟が建設されたのを受けて駐在を開始。機材の据え付けからスタッフの採用までこなしたうえで、2016年9月に操業開始にこぎ着けた。現在の取引相手は9割がミャンマーの地元企業だ。
軍政時代も続けた取引
RKヤンゴンスチールの本社であるアール・ケイとミャンマーの縁は、20年以上にわたる。
軍政時代も、日本をはじめ海外企業が次々に撤退を余儀なくされるのを横目に日本からヤンゴン港まで鉄鋼を運搬し、通関や国内輸送は地元企業に委ねる「CIF方式」によってミャンマーとの取引を続けてきた。
そのアール・ケイにとって、いずれミャンマーに拠点を開設したいというのは、長年温めてきた悲願だった。
2012年に米国のバラク・オバマ米大統領(当時)とテインセイン大統領(当時)の面会が実現し、日本が官民を挙げてティラワSEZの開発に協力することが決定されたのを機に、満を持してミャンマーで念願の製造業に乗り出すことを決断。
地元企業を含め、本格的なコイルセンターを備えている企業は他になかったことが背中を押した。
他より一歩先に動く
もちろん、不安は尽きなかった。最大の懸念は、鉄の使用量が少ないことだった。
いくら市内のあちこちでコンドミニアムやホテルの新築が相次ぎ、以前に比べて需要が伸びているとはいっても、ミャンマーでは今なおほとんどの家屋が木造で、冷蔵庫やエアコンなどの家電製品もあまり普及していない。