さらに、街中を走る自動車も、かつて海外から輸入された中古車がほとんどで、新車は近隣国で製造された車両を組み立てるノックダウンのみという状況を目の当たりにした笠原さん。
鉄の需要は近隣国に比べるとかなり低いこの国で、鉄の製造や販売が商売として成り立つのは当分先のように思われた。
それでも、かつて1990年代に、当時としてはいち早くベトナムに進出し、販売拠点を開設した時と同じように、まだ市場が成熟していない今の段階からミャンマーで足場を固めるというのは、同社らしい戦略だと言えよう。
「最初の数年は苦労するでしょうが、他より一歩先に動くのがアール・ケイのポリシーなのです」と、笑いながらこともなげに言う笠原さんは、意外なほど落ち着き払っている。
さらに、取引先の9割がミャンマー企業であるRKヤンゴンスチールにとって、現地に大量に出回る安価な中国製鋼材との競争も避けては通れない切実な問題だ。
地元企業の多くは品質の高さより安さを重視する傾向にあり、なかなか長期的な視野で選んでもらいづらいためだ。
それでも笠原さんは、「うちはコイルから必要な長さを引き出して切り取るため、定尺ではなく、客のニーズに応じてサイズを変えられるうえ、小ロットでも対応できるのが強み」だと胸を張る。
このほかにも、加工・製造プロセスが徹底管理されてトレーサビリティーがあるため、購入後に改めて品質やサイズを検査する必要がないという。