今年3月27日から28日にかけて、金正恩北朝鮮労働党委員長が電撃的に中国を訪問、習近平国家主席と会談したことが明らかにされた。
親中派とみられていた張成沢(チャン・ソンテク)の粛清、中国の面子を潰すかのような北朝鮮の度重なる核・ミサイル実験の実施、それに対する習近平国家主席の訪韓優先、国連安保理での対北朝鮮制裁決議への賛同など、かねて中朝関係は冷却化しているとみられてきた。
それだけに今回の中朝首脳会談は意外性をもって受け止められた。その背景として、北朝鮮としては、
(1)南北首脳会談、米朝首脳会談を控え、中国の後ろ盾を得て外交的な立場を強めたいとの思惑
(2)国連の経済制裁に苦しむ北朝鮮として、制裁の抜け道提供、制裁緩和を中国に要望すること
(3)米朝首脳会談が決裂すれば米国が軍事選択肢をとる可能性が高まっており、それに備えて中朝の同盟関係を再確認することなどの狙いがあるものとみられる。
他方の中国としては、
(1)昨年10月の党大会では鄧小平思想からの脱却を訴えて人事を刷新し、今年3月の全人代では憲法を改正し国家主席の任期制限を撤廃するなど、独裁体制を強めた習近平主席にとり、大きな外交的成果となること
(2)米中貿易戦争の兆しが強まるなか、北朝鮮を取り込むことで、対米交渉上の立場を強化できること
(3)米国の北朝鮮に対する軍事選択肢行使のおそれが高まるなか、中朝同盟を誇示することで米国の軍事選択肢を抑止することなどの狙いがあるとみられる。
しかし、それだけではない。より根底的な動きとして、米トランプ政権が主導した南北朝鮮間のバランス・オブ・パワーの変化による中朝の利害の一致という側面がある。