宋永武(ソン・ヨンム)国防長官は昨年7月31日に韓国国会で、原子力潜水艦の建造を検討する準備ができていると発言している。

 また、韓国国防部の原潜研究に参加している専門家は、韓国国内で建造するとしても、米国が積極的に技術支援をすれば3年あれば原潜の進水が可能と述べている。

 弾道ミサイルの開発も進んでいる。北朝鮮のICBM発射に対抗して韓国は昨年7月28日に戦域弾道ミサイル(射程1000キロ以上)の試射映像を公開している。2発が発射され、1発目は標的に命中し、2発目は掩体構築物と見られる標的の破壊に成功した。

 韓国は昨年6月30日、張保皐(チャン・ポゴ)-Ⅲ級潜水艦(3000t)3番艦の起工式を行った。張保皐-Ⅲ級は初めて韓国独自の技術で建造される潜水艦で、SLBMを発射する垂直発射管を6本装備し、射程500キロの玄武(ヒョンム)-2B(弾道ミサイル)の発射が可能である(『中央日報』2017年6月30日)。

 韓国の核兵器開発の潜在能力も北朝鮮よりもはるかに高い。韓国では、朴正煕政権下で約10年間秘密裏に核開発を行っており、プルトニウム抽出技術も持っている。

 韓国紙『中央日報』2017年11月1日付は、韓国の原発には約50トン、核爆弾1万発分と日本以上のプルトニウムが蓄積されていると報じている。

このように、韓国はトランプ政権容認のもと、SLBM搭載SSBNの建造に向けて、着々と歩を進めている。

3 焦る北朝鮮と突然の金正恩訪中の背景

 韓国のSSBN保有を容認した昨年の11月の米韓首脳会談での合意に対する北朝鮮の回答が、11月29日の「火星15」打ち上げであった。その狙いは、その直後の宣言でも明らかなように、「国家核武力の完成」を内外に示すことにあったとみられる。

 しかし北朝鮮が2か月以上の沈黙を破り突然、米大陸全土を攻撃可能とする「火星15」の発射を敢行したのは、北朝鮮の焦りも反映しているとみられる。焦りは、ロフティッド軌道で打ち上げたことに表れている。

 ロフティッド軌道での試験の方が、本来の最大射程に近い低角度の発射に比べて、弾頭再突入時の角度が大気圏に対して直角になり、熱や衝撃の影響度を押さえて試験ができる。

 逆に言えば、再突入技術やそれに続く核弾頭の指定高度での起爆には自信がないことを示唆している。低角度での長射程発射試験に成功しなければ、再突入技術が完成したとは言えないであろう。

 これを裏づけるように、今年1月ポール・セルバ米統合参謀本部副議長は、「(北朝鮮は)弾頭の起爆や大気圏再突入などの技術を確立させたと実証していない」と発言している。