このままでは、米朝首脳会談は決裂し、米軍が軍事選択肢をとる可能性が一気に高まることになろう。
しかし前述したように、米国側にも「完全不可逆で検証可能な非核化」を確実に強要できる決め手には欠けている。あえて断行すれば、第2の朝鮮戦争となり、その被害は日米にも及び、「かつてない規模の惨害」を招くことになるであろう。
米国としては、限定的な斬首作戦や海上封鎖などの準軍事選択肢により一撃を与え、有利な立場から北朝鮮と交渉することを可能な目標とせざるを得ないのではないかとみられる。
結局は、
(1)イラン、シリアなどの他国やテログループに核拡散させないこと
(2)核実験の禁止
(3)核関連物質の増産制限と管理強化
などを条件に、北朝鮮と核・ミサイル開発凍結交渉を行うことを具体的達成目標とする程度でおさめることにならざるをえないのではないかと思われる。
まとめ 真の問題は米朝会談後の日本の安全保障
むしろ真の問題は、当面の北朝鮮の非核化ではなく、南北共に核保有をした朝鮮半島がもたらす、北東アジアのバランス・オブ・パワーへの衝撃、とりわけ、依然として防衛費は対GDP比1%程度と、応分の防衛努力を怠っている日本の安全保障への影響である。
米国への鉄鋼、アルミ製品の輸入に対する関税引き上げについて、トランプ政権は韓国を対象外としながら、日本を対象外とはしなかった。このことはフリーライダーにとどまろうとする、日本に対するトランプ政権の不信感の表れかもしれない。
今後も日本が応分の防衛努力を怠るならば、日米関係も危うくなる恐れが出てくるであろう。
防衛努力の怠慢が続けば、日本が、今後10年以内に出現するかもしれない核兵器と膨大な通常戦力を持つ統一朝鮮や、今世紀半ばには米軍と並ぶ「世界一流の軍隊」を建設すると表明している習近平による長期独裁下の中国の脅威に対し、主権と独立を守り抜くことは不可能であろう。