「長年ここで農業を営んできた自分たちの権利を認め、適切な補償をしてほしい」と地元NGOに駆け込んだ。

 事態を受け日本側が再三再四、国際基準で立ち退き交渉の手続きを踏むよう申し入れた結果、強制移転や逮捕・監禁は回避され、その後は国際基準に沿って開発が進められている。

 JICAも海外投融資や円借款、無償資金協力などを通じて支援しているものの、国際社会の眼差しは今なお厳しい。

苦情受付の一元化

移転住民たちとコミュニケーションをとるプロジェクトスタッフ

 各国から集まったNGOや研究者の注目を浴びながらステージに上がったチームティラワがこの日紹介したのは、苦情処理メカニズムだ。

 ティラワSEZへの住民の不満や苦情を一元的に受けつけるため、2017年10月より整備が進められている。

 それ以前も、こうした仕組みがなかったわけではない。

 住友商事、丸紅、三菱商事とともにMJTDに出資しているJICAは、許認可手続きを一元的に管理・支援するワンストップサービスセンターの立ち上げから周辺インフラの整備まで、投資環境を整えるべく積極的に支援してきた。

 一方で、土地収用や生計回復支援のための技術協力も展開してきた。

 その一環として、MJTD社やSEZ管理委員会、住民、NGOが3カ月に1度、定期的に会合したり、SEZ管理委員会のメンバーが移転住民の家を月に一度訪れたりして、対面でニーズと苦情を吸い上げる仕組みが立ち上げられていた。

 その延長線上に立ち上げられた新たな苦情処理メカニズムでは、移転住民に限らず、より広い周辺住民からの申し立ても含めて一元的に対応し、内容を記録に残すことが可能になる。