さらに、MJTDの清水社長は、進出企業にとっての有用性を強調する。
「大手のコンシューマービジネス企業なら、当然、本社に〝お客様相談窓口″を置いているだろうが、中小企業や製造業は、そうした部署もない場合も多い」
「SEZ管理委員会が一括して住民からの苦情処理にあたれば、そうした方々にも安心してティラワに進出していただき、モノづくりに専念してもらえる」
ジュネーブから戻った清水社長は、さっそく入居企業に呼びかけ、菊池さんと一緒に、12月と2月の2回にわたり、英語、ミャンマー語、および日本語で説明会を開いた。
二重三重のリスクを超えて
苦情処理メカニズムには、さらなる大きな使命も課せられている。
よく知られる通り、近年、企業の投資行動には、国際社会からかつてないほど厳しい監視の目が注がれ、責任が問われるようになっている。
国連で2011年に採択され、前出のフォーラムが定期的に開催されるきっかけになった「ビジネスと人権に関する指導原則」は、その象徴だ。
2015年に採択された「パリ協定」でも、企業は脱炭素経済社会の実現の実質的な牽引役としての役割と期待が課せられた。
さらに同年、国連でミレニアム開発目標(MDGs)の後継目標として持続可能な開発目標(SDGs)が採択されたことを受け、日本国内でも経団連が2017年に企業行動憲章を改定し、SDGsへの貢献を明確に打ち出した。