安倍晋三首相(自民党総裁)の強力なリーダーシップで、戦後初の改憲が政治日程に上がってきた。自民党は先の総選挙で公約に掲げた改憲4項目を3月下旬までに取りまとめようとしている。
いざ改正となると、4項目だけでなく戦後70余年間に露見した不具合があれこれ思い出される。その第1は日本国家の在り様そのものである天皇に関することである。
日本国家の弱体化を目指した米国の政策で、男系天皇の存続さえ危ぶまれる状況に至っていることである。
第2は現憲法下で核家族化が進み、子供も老人も国家が管理する共産主義社会同然になりつつあり、家族の絆を大切にする日本人のアイデンティティが消滅の危機に瀕していることだ。
本来は日本の安全に関わる9条や緊急事態条項に加え、上記の2点が教育無償化や合区問題より大きなテーマであろうが、政権党として他党の賛成も確保して改憲を確実なものにしたい意向から公約のように絞り込まれたのであろう。
中でも自衛隊をどのように書き込むかが最大の焦点とみられる。抑止力として存在する自衛隊であるが、国民の支持がなければ、北斎の富岳三十六景に見るような大波に日本がのみ込まれかねない。
各政党が国際情勢に目を背け、「安倍政権の下での憲法改正は許されない」などといった政局にとらわれていると、東日本大震災で経験した想定外の国難に直面しても対処できない。
マッカーサー将軍の意図
大東亜戦争(米国では日米戦争)では歴戦の勇士として指揮を執ったマッカーサー将軍であったが、緒戦で日本軍に苦戦を強いられた。
態勢立て直しのためとはいえ、一時はフィリピンからオーストラリアに撤退した将軍が、日本と日本軍にいかなる感情を抱いたかは想像に余りある。
将軍を送り出した米国自体も想像以上の損害を受け、日本弱体化を意図した政策を打ち出し、連合軍最高司令部(GHQ)のマッカーサー司令官に指示した。
同じ敗戦国のドイツと日本に対する米国の対処が全く異なっていたことは、敗戦日のニューヨーク・タイムズ(NYT)の報道から読み取ることができる。