毛沢東思想を今も実践、観光客に人気の南街村 党員の視察も増加

中国の南街村で、毛沢東の巨大な看板の前を走る観光客を乗せた車(2017年9月29日撮影)。(c)AFP/GREG BAKER〔AFPBB News

 中国が内外で力を弱めていると言われる。

 それを隠蔽するための世論戦を中国共産党政権が全力を傾けて行い、「アジアでは米国の影響力が衰え、中国の力が増大している」とプロパガンダに尽力しているというのである。

 これは、ワシントンの大手研究機関AEIのアジア研究部長ダン・ブルーメンソールの見解であるが、その細部については古森義久氏「『米国は衰退』を全世界に広めようとしている中国」に詳しい。

 習近平の第2期政権が発足して以降、中国共産党の理論誌「求是」は「中国こそが世界最大の民主国家だ」と喧伝している。

 他方で当局の締めつけは一段と強化されていると言われることなどから、改革派知識人からは批判が挙がっているとされる。「民主国家」と言いながら「締めつけ」では矛盾も甚だしく、批判は当然であろう。

 また、政権が全力を挙げて進める「一帯一路」では、契約の齟齬からあちこちで綻びが出始めている。

 いくつかの国での事業の中断も報道され、信用が失われつつある。そうしたことから、日本をAIIB(アジアインフラ投資銀行)に誘い込み、「信用の回復」につなげようとしているようだ。

 「賢者は歴史に学ぶ」と言われる。中国が日本に接近した歴史に学び、過ちを繰り返さないことが肝要である。

中国の覚醒と共産党存続に日本を利用

 アヘン戦争で英国に敗北した清朝では、西洋に見習えと富国強兵を目指して洋務運動が起きる。

 しかし清仏戦争に負け、洋務運動の失敗が証明される。続いて日清戦争に敗北すると、「日本に学べ」と日本熱が高まり、留学生が多数押し寄せて来る。日本に亡命していた康有為や梁啓超の啓蒙運動が留学生に与えた影響は無視できないと言われる。

 黄文雄氏は「腐敗した清朝を転覆し、300年近くにわたる中国統治に終止符を打たせたのが1911年の辛亥革命である。

 それを推進した革命思想は日本で醸成され、発展し、そして中国へ発信された。その担い手が、若き清国の留学生たちだった」(『近代中国は日本がつくった』)と記述している。