北朝鮮が盛んに金正恩朝鮮労働党委員長の動静を報道している。
曰く、装輪式移動発射台(TEL)用タイヤ工場を視察して檄を飛ばした、革命聖地とされる白頭山に登頂して「国家核戦力完成の歴史的大業を輝かしく実現してきた激動の日々を感慨深く振り返った」、軍需工業大会で「世界最強の核強国、軍事強国としてさらに前進、飛躍するだろう」と宣言したなどである。
米国東海岸まで届くとされる「火星15型」が北朝鮮に自信を持たせたのは確かであろう。度重なる安保理決議を無視し、また米軍の空母3隻が日本海に結集した圧力にも屈せず、ついに核搭載のICBMを入手する寸前まで至ったからに違いない。
欧州も北朝鮮の核・ミサイルを脅威と見るようになり、世界中が米朝の非難の応酬や中露の行動を注視している。日本政府は独自制裁が「一定の効果を及ぼしている」と述べるが、すぐそこにある危機に抜かりはないだろうか。
軍事的圧力について、日本は百年一日のごとく専守防衛からの逸脱は許されない、敵基地攻撃能力が必要ではないかなどの議論ばかりで、組織だった国民的対応策までには至っていない。
平成30年度予算要求で航空機搭載巡航ミサイルや地上配備型のイージス・アショアの導入が決まったが、これらが実戦配備されるのは数年先であり、正しく「泥棒を見て縄を綯う」諺そのものである。
多くの日本人は「平和」を堪能する一方で、戦争や危機について「考えない」「準備しない」ことが「平和」につながると思い込んできたから致し方ないが、政治の怠慢であることに違いはない。
トランプ大統領の首相への発言
米国のドナルド・トランプ大統領は安倍晋三首相に2回ほど、日本上空を飛翔する北朝鮮の弾道ミサイルをなぜ撃ち落さないのかと聞いている(「週刊文春」2017年12月14日号)。
最初は8月末に北海道上空を通過した後、「迎撃しないのか」と不満を伝えたと、首相側近の話として伝わっている。
2回目は11月29日未明の発射の後の緊急電話会談で、首相が「北朝鮮はミサイル開発を執拗に追求し続けている」と語ったのに対し、大統領は「圧力をさらに強めていく必要がある」と語り、また「何で今回も迎撃しないんだ。サムライの国だろ」とまくし立てたという。
首相は「集団的自衛権の範囲内で日本はやれることをやる」と応じたそうであるが、トランプは「よほど〝特攻″を仕かけたいのか、よく『お祖父さん(岸信介元首相)は神風特攻隊だったんだろ』と言ってくる」とも書いている。
「よく」ということは、会談でしばしばそうした話が出るからであろう。その度に首相は、「それは父でね」と返しているそうである。
「領空」は領土および領海の上空で、その領域上の空間において完全かつ排他的な主権を有する、また領海に認められる無害通航権は一般には認められないとブリタニカ国際大百科事典にある。
ただ、上空の垂直的範囲については規定されていないが、人工衛星が飛び交う今日、領空は無限の上空に及ぶという説は否定され、一般的には人工衛星の最低軌道が領空の限界とされているという。