かつては見て盗むしか上達する術はなかったが、今では、今回のような取り組みも含め、さまざまな教育体制が整ってきている。
坪井先生がこうしたプログラムで講師を務めるのは、来年で10回目になるという。目的のひとつは実臨床へのフィードバックだが、こうやって交流を持つことも大事だと語る。
「言い方は悪いですが、大学の中には強いヒエラルキーがあって、井の中の蛙になりやすいのです。よその施設でどんなことをやっているか知ることによって、自分の世界は必ず膨らみます。今日も、私の知らないミャンマーやタイ、フィリピンの先生方の考え方を聞き、彼らがやっているのを見て学ぶことが輪を広げるし、コミュニケーションを広げてくれる。それは私の患者さんにも最適なことだと思っています」
フィリピンから研修に参加した、ラモンJr.・インペリアル・ディアズ先生は、今回の研修で得たものについて、
「坪井先生や国立がんセンターのスタッフのような、手術のエキスパートとのコネクション作り。彼らは専門性とホスピタリティを見せてくれた。スキルと技術を学べて嬉しかった」
と語っていた。
「この教育というのは、臨床へのフィードバックとともに、輪を広げていくことによって、自分が新しい情報を得て、また新しいスキルを身につけ磨いていくチャンスだと思ってもらえたらいいと思います」(坪井先生)
肺がんへの対応は、もはや各国それぞれの問題ではなく、世界全体で取り組むべきものになってきている。このような輪がさらに広がっていくことで、東南アジアでの肺がん治療の水準が高まり、さらには日本の医療へのフィードバックも進んでいくだろう。