働き方改革への取り組みが各方面で加速している。筆者は、働き方改革そのものについては全面的に賛成する立場だが、一連の取り組みを通じて、日本の労働市場が抱える矛盾も浮き彫りになってきている。働き方改革を通じて、日本の労働市場の本質について探った。
「残業」を減らすため業務を外部に丸投げ?
働き方改革がクローズアップされてきたことから、大企業を中心に長時間残業を抑制する動きが顕著となっている。日本人が働き過ぎであるという問題は以前から指摘されてきたことだが、これまでのところ、目立った成果を上げることはできなかった。その点からすると、今回の残業抑制に対する各社の本気度は高く、これまでにない成果が得られる可能性も出てきたといってよいだろう。
一方で、各社の取り組みの中には、本末転倒なケースも散見される。正式な統計がないのではっきりした事は分からないが、数字上、残業を抑制するため、派遣社員やフリーランスに仕事を丸投げするケースが大企業を中心に増えているという。
人材派遣大手のパソナにおける2016年6月~2017年2月期(第3四半期)の人材派遣事業の売上高は前年同期比7.6%のプラス、請け負いについては2.6%の増加だった。またクラウドソーシング大手のランサーズが行ったフリーランス実態調査によると、2017年2月時点における広義のフリーランサー(副業などを含む)数は、1年前と比較して58万人も増えている。業務の外注が活発になっているのは、ある程度は事実のようだ。
アウトソーシングそのものは悪いことではないが、働き方改革の本質はムダな業務を見直し、同じマンパワーでより多くの生産を実現することにある。業務のムダが削減されず、正社員の残業でカバーされていた仕事の一部が、単に外部にアウトソーシングされただけでは、企業の生産性は向上しない。