新たな大規模サイバー攻撃、水面下で進行 WannaCry超える規模

ロシアの首都モスクワのカスペルスキー本社で、機械コーディング記号のデザインが施されたガラス壁の後ろを歩く人。(c)AFP/Kirill KUDRYAVTSEV〔AFPBB News

 前々回のこのコラムが掲載された2017年7月21日は、ビットコイナーにとってスリリングな1日になりました。

 結果的に本稿を書いている7月23日時点では、予想された最悪の危機は回避されたように見えます。しかし、8月1日にはいまだ先の見えない動きも予告されています。これら現在進行形の事態からデジタル通貨とフィンテックの現状を考えてみたいと思います。

 前々回のコラムでは、ビットコインが中央制御されることなく、元帳が共有され、それが承認されて確定する「ブロック」が鎖状に連続する「チェーン」となることで成立している、おおまかなメカニズムと、取引量の増加に伴って決済遅延などの問題が発生し始めたこと、それへの対処法で意見の対立がある、といったところまでで紙幅が尽きました。

 何かと手狭になってきたビットコインのシステムを高機能化するうえで「segwit」と呼ばれる改変が提案されました。

 またその有効化にはマイナーのブロック生成時に「投票」が行われます。一定以上の支持を集めると新システムが承認され(前回触れた用語ですが)「ソフトフォーク」が実行されるような段取りが組まれました・・・。

 などと書いても、見慣れぬ用語ばかりが並ぶと、なかなか分かり難いと思います。これを、いくつかの観点を簡略化しながら、できるだけ見通しよくしようというのが、今回の記事の目論見です。

 「segwit」とは技術的には「BIP141」と呼ばれるもので、「segregated witness (分離された署名)」の意味で名づけられたシステム改変です。

 ビットコイン情報が「BIP141 segwit style」で書かれることで、一般に「トランザクション展性」と呼ばれるビットコインの脆弱性を克服することができます。

 原語ではトランザクション・マレアビリティ(Transaction Malleability)で、トランザクション改変性とでも呼ぶべきものと思いますが、ここでは通例に従う用語を示しておきます。

 要するに、セキュリティに開いた穴と考えて先に進みましょう。

 2014年2月24日のマウント・ゴックス(Mt.Gox)倒産事件では、数年間にわたって合計744,948ビットコインにも上る電子通貨が盗み出され、一時は最大規模を誇った電子通貨取引所が破綻に追い込まれました。

 この事件の原因は明らかになっておらず、複雑な背景があるとされますが、「トランザクション展性」はその一因であったと言われます。「segwit」のシステムは、有効化されればこの問題を解消できるように準備されました。