米国のバラク・オバマ政権時代の大統領をはじめ国務長官や国防長官らが、尖閣諸島について「日米安全保障条約第5条の下でのコミットメントの範囲に含まれる」と述べてきた。
しかし、日本が行動しない限り米国が動くことはない。中国の漁船や海警の接続水域での行動は日常茶飯事で、領海侵犯もしばしば起きるようになり、中国は行動をエスカレートさせてきた。そして、軍艦が領海侵犯をするに至っても、日本が表立って行動することはなかった。
領空接近阻止のスクランブル回数も対中国相手のケースが著しく増大している。揚げ句には、攻撃動作と称される敵対的な動きさえ行い、航空自衛隊(空自)のスクランブル機はフレアを放出して脱出を図ったことも明らかになった。
ドナルド・トランプ政権になってからもジェームス・マティス国防長官やレックス・ティラーソン国務長官が、尖閣諸島については前政権同様に「(米国の対日防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条が適用される」と明言している。
しかし、北朝鮮の度重なる弾道ミサイル発射や新型ミサイルの試射が続き、焦点は北朝鮮対処に移ってしまった。2月12日の新型中距離ミサイル発射では、安倍晋三首相とトランプ大統領が会談中であったこともあり、首相の発表会見に大統領が同席して「米国は100%日本と共にある」と述べた。
日米安保第5条の記述
日米安保条約の第5条前半には、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続きに従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」とある。
後半は、両国が執ったすべての措置について国連安保理に報告すること、並びに安保理が必要な措置をとった時は終止することを謳っている。
米国の政府要人が「尖閣は日米安保第5条の適用範囲」と表明すると、多くの日本人は米国が助っ人としての言質を与えたかのごとくに安心してしまっているのが現実である。
しかし、条文をよく読むと、米国が助っ人になる条件は「武力攻撃」が発生し、それが「米国の平和及び安全を危うくするものと認定」されなければならない。
なおかつ「米国の憲法上の規定及び手続きに従う」ことになるわけで、ことが起きたからすぐにやって来てくれるというものではない。