諸問題の当事国の指導者たちは、オバマ政権が軍事力を使用しないことが分かっているから、米軍の脅威を気にしないでさらに一歩踏み込んだ挑発行為を行ってきた。

 まるでオバマ政権のレッドラインがどこかを試すかのような挑発を行うことができた。米国の軍事力を最初から使用しないと宣言するオバマ氏のアプローチが、彼の対外政策の失敗の大きな要因である。

 また、オバマ政権下においては、国防省に対するマイクロマネジメント(些細なことまで管理すること)の弊害が指摘されている。

 あまりにも軍事作戦の細部にまで関与してくるオバマ氏やスーザン・ライス国家安全保障担当大統領補佐官(当時)と国防省の関係は良いものではなかった。

 一方、トランプ政権は、「すべての選択肢がテーブルの上にある」と宣言し、軍事力の使用に関しては状況により使用することもあるし、使用しないこともあるという「あいまい戦略」を採用している。

 この軍事力の使用を否定しないアプローチこそが相手のさらなる挑発を抑止するために不可欠だ。

 また、トランプ政権は、国防省に対し「自由に作戦をしなさい」というお墨付きを与えている。米国内の報道によると、トランプ大統領は、アフガニスタンにおけるMOABの攻撃についてメディアが報道するまで知らなかったという。

 ここまで国防省に自由度を与えるのも問題があるが、オバマ政権とは180度違う国防省に対する管理方法である。

米国は北朝鮮に対する軍事行動を実施するか?

●爆撃・ミサイル攻撃・斬首作戦などの軍事行動の可能性は(当分の間)低い

 現時点(4月17日)では、米軍による北朝鮮に対する爆撃、ミサイル攻撃、金正恩委員長を狙った斬首作戦などを行う確率は低くなってきた。理由は以下の通りである。

・米軍による軍事作戦は、北朝鮮の韓国攻撃や在日米軍を含む日本に対する攻撃を誘発する可能性が高い。この北朝鮮軍の攻撃に対抗するためには大規模な戦力が必要だし準備も必要だが、現在の米軍はそのような態勢になっていない。

・マクマスター国家安全保障担当大統領補佐官は、4月16日に米国ABCテレビに出演し、「平和的に問題を解決するために、軍事的選択を除くあらゆる行動に出るべき時だ。武力衝突に至らない範囲で行動を起こせば、最悪の事態は避けられる」と軍事行動を否定している。

・韓国に所在する米国人を避難させる非戦闘員避難作戦(NEO)が大々的になされたという兆候がない。NEOは戦争開始の重要な兆候だ。

・ワシントンポストは14日、トランプ米政権の公式な対北朝鮮政策として、「金正恩委員長の政権変更(regime change)は求めない方針を固めた」と伝えた。

 2か月にわたる政策の検討の結果、北朝鮮に対し、経済制裁や外交手段により「最大限の圧力(maximum pressure)」をかけながら非核化(核兵器の放棄)を迫るとしている。圧力強化に際しては、北朝鮮の後ろ盾である中国の協力に重点を置いたと説明している。