1885年、ソウルで発生した残虐処刑をきっかけに福澤諭吉が「脱亜論」を時事新報に発表した経緯を前回のコラム原稿として書いている最中、まさに歴史は繰り返す、同様の残虐な報道が世界を駆け巡りました。
出来事をざっと振り返っておきましょう。
AP電によりますと4月4日の早朝、シリアで反体制派が支配する北部イドリブ県ハンシャイフンを戦闘機が攻撃、ここで毒ガスと思われる化学兵器が使用されて多数の死傷者が発生。
さらに被害者が治療を受けていた近隣の病院も複数回空爆で破壊されるという軍事行動が報道されました。
こうした行動は戦争犯罪に当たると考えられます。
シリアでは「貧者の核」、化学兵器を用いた攻撃が続いており、多くの人命が奪われ、都市という以上に社会全体が破壊され続けている、これは間違いのないことだと思います。
2013年9月には化学兵器禁止条約に加盟、190国目のメンバーとなります。この時点でシリアには少なくとも25か所の関連施設があり、1300トンを超える化学兵器が存在しているとされました。
この年のノーベル平和賞は、化学兵器の廃絶を推し進めた化学兵器禁止機関(OPCW)に与えられています。
サリン使用? 偽装廃棄?
今回使用された化学兵器は「サリン」であった可能性が指摘されています。サリンという毒ガスは、日本では「地下鉄サリン事件」を通じて記憶している人も多いと思います。
しかし先日、今年度の大学1、2年生たちと関連の話をしていて、現在の大学教養学部生は1997-98年生まれが大半、大学4年生にして95年生まれなので、その95年に発生した阪神淡路大震災も、地下鉄サリン事件も、リアルな記憶は全く持っていないという話になり、記憶の風化を如実に感じざるを得ませんでした。
さて、今回のシリア「サリン」攻撃ではサリンを用いたと思われる空爆が実施され、直接的には80人以上が死亡、350人以上が負傷したと報じられています。
これに対して、米軍は日本時間の4月7日これらの攻撃を実行したと見られている、シリア軍機の発信基地、シャイラット空軍基地を空爆攻撃。
東地中海を遊弋する米駆逐艦から60発の巡航ミサイル「トマホーク」を発射するよう命令、このうち不発であった1つを除く59発が実際に発射され、シャイラットの滑走路や格納庫、燃料タンクなどに着弾、破壊に成功した、と報じられます。
ここで私は、福澤諭吉の「脱亜論」を思い出さざるを得ないのです。