前回の原稿を書いている最中の4月13日、米国はアフガニスタンで大規模爆風爆弾「MOAB」を用いた空爆攻撃が実施され、IS(イスラム国)兵士36人が掃討されたとの報道がありました。
ハーミド・カルザイ前アフガニスタン大統領は直ちにこれをツイッターで激しく非難、アフガニスタンの土地と人民を実験台にした新兵器の試用であると抗議します。
4月7日のシリア攻撃、そして1週間後13日のアフガン、米国としては「世界の警察官」復帰のキャンペーンが着々と進み、そのままの勢いで北朝鮮、東アジアエリアに飛び火しないことをただただ祈るばかりです。
ここで、シリアについて1点確認しておくと、今のタイミングでバッシャール・アル=アサド政権に化学兵器を行使するメリットは何一つありません。
私は13日に赤坂のシリア大使館でワリフ・ハラビ大使と3時間ほど別件で打ち合わせを行いましたが、そこでも再々強調され、その通りだとしか言いようがありませんでした。
2013年の化学兵器禁止条約への加盟、国内施設の破壊と関連兵器の引渡しなど、平和カードを切って外交を進める中で発生・拡大してきたISシリア紛争にあって、国際世論を敵に回す化学兵器空爆がシリア・アラブ共和国にとってプラスになることはほとんどありません。
もちろん、私もアサド政権へ肩入れなど全くしていません。
「シリアはこのタイミングで化学兵器を持っている」というシグナルを発したかったのではないか、という観測にもならない「評論家」の意見を目にしました。
しかし、「武器を持っている」というカードを誇示したかったのは、アフガンでそれを実戦試用した米軍側で、語るに落ちるというか、問わず語りに自分自身を説明してしまう例があるものだ、とあきれざるを得ませんでした。
「ヘイト」という感情は、悪者を殲滅しても「正義」であるという爽やかな印象を残しがちです。それが非常に危うい。
3月末から急にきな臭くなってきた世界情勢は、米国内で拙劣な政権が失敗を重ねてきたことと期を一にしています。