清水建設、土地所有者、設計事務所、投資企業を含めた関係者の間で温度差があり、急激な円安動向も影響し、「清水建設は初期工事費用などで損失を出したが、撤退した」(大手ゼネコン関係者)という。そのため当初の計画から数年遅れ、竣工した。

 もともと盆地の京都は、土地が狭い上、個々にその所有者が分れていることで土地取得が困難だ。さらに、厳しい景観規制が高級ホテルの参入を遅らせ、「国際色豊かで多様な観光客を迎えるにはまだまだラグジュエリーホテルが足りない」(フォーシーズンズホテル京都視察の門川市長)。

 これまでの外資参入は経営不振などで閉業した病院やホテル、学校閉校などの跡地などを買収したもので、加えて京都市が、今回のフォーシーズンズに代表されるように、「特例中の特例」で例外規定のもと、富裕層の海外顧客の誘致を図り、建設許可を出したものだ。今後、土地売買の熾烈な戦いはさらに激化するだろう。

 一方、米国の著名雑誌で「世界一の人気都市」に選ばれた京都は「世界的に潜在力が高く日本の文化的な象徴だけでなく、世界に革新的技術を発信する屈指の国際都市。東京五輪に向け、さらに市場拡大する」(フォーシーズンズホテル京都のアレックス・ポーティアス総支配人)と期待されている。

規制緩和で外資系進出に拍車

 その宿泊需要を背景に昨年末、京都市が打ち出した今回の規制緩和方針は、東京五輪をターゲットに、外資進出を強力に後押しすることになりそうだ。

 中でも、世界屈指の著名リゾート、「アマンリゾーツ」(本社:英国)が今年にも、紅葉の名所で有名な鷹峯(たかがみね、京都市北区)に開業予定だ。金閣寺の奥地のアマン流「極上の隠れ家」のような「アマン京都」の構想段階から約10年越しの悲願の京都進出となる。

 数年前、周辺に「アマンニワ」を開業する予定だったが、頓挫。当時、伝説の創業者で親日のゼッカ氏が経営問題で失脚したのと、今回規制緩和される住居専用地域だったため、建設を断念せざるを得なかったからだ。

 さらに、2019年には、ミシュランガイド2つ星の京懐石の老舗料亭「山荘京大和」(東山区)が、敷地内に高級ホテルを開業するという。

 米国のハイアットホテルズグループが運営し、最上級ブランド「パークハイアット京都」としてオープン予定。パークハイアットは東京で展開しているが、西日本では初めて。

 二寧坂に面した古都の景観に美しく調和するよう低層としながらも、山荘京大和は営業を継続するため、京都の名立たる老舗料亭と外資ホテルの「伝統と近代の同居(コラボ)」という新しいコンセプトも提供する。

 一方で、“もう一つの外資”が世界で髄一の観光地の需要を狙って凌ぎを削っている。

 米国発のAirbnbだ。ハーバード大卒業生らが起業したエアビーは、旅行客(ゲスト)と、宿泊施設として利用できる家や部屋を所有する人(ホスト)を仲介する、世界最大手の「民泊」仲介サイト。

 2008年に創業され、現在192カ国以上、3万3000以上の都市で100万近い宿を提供し、 100億ドル以上の評価額があるグローバル企業だ。日本での利用者は昨年比で「約520%の増加とされ、日本は世界最大の成長マーケット」(大手不動産会社)といわれている。