経営力がまぶしい日本の市町村50選(45)
和紙と万葉集の歴史遺産
埼玉県の中央部よりやや西に位置する小川町は人口3万1216人(2016年10月)の町である。周囲を緑豊かな外秩父の山々に囲まれ、市街地の中央に槻川が流れる。
歴史を誇る小川和紙や小川絹をはじめ、建具、酒造などの伝統産業で古くから栄えた。また、歴史を秘めて佇む史跡や往時の面影を留める町並み、地形の類似性などから、「武蔵の小京都」と呼ばれている。
特に小川和紙の中でも楮(こうぞ)だけを使用した「細川紙」の製造技術は1300年の歴史をもち、国から重要無形文化財の指定を受け、2014年にはユネスコの無形文化遺産に登録されている。
緑豊かな山々に囲まれた小川盆地と、槻川や兜川の清流、都心に比較的近いという地理的条件、原材料となる豊富な資源などが揃って、この伝統工芸は守り育てられてきた。
また、この町の市街地には、70本の「万葉モニュメント」がある。
万葉モニュメントには、73首の万葉集の歌とその大意、そしてその歌にふさわしい小川町の情景、花や名産品などの写真が解説とともに示されている。
万葉ゆかりの地となった背景には、万葉研究のパイオニアとして万葉集を現代に伝来させた最大の功労者である仙覚(せんがく)律師という鎌倉時代の僧侶が、この町で万葉集の研究をしていたことに由来する。
もともと町内には、古代~中世の史跡・寺社仏閣をはじめとする魅力的な文化財が存在し、歴史遺産がそのまま現代に継承されている。例えば仙覚の業績を称えた顕彰碑のある陣屋台の大梅寺、八幡神社、白山社などの敷地内に林立する木の幹の太さからも、その由緒を伺い知ることができる。
伝統工芸と有機農業のマリアージュ
さらには有機農業のメッカとしても知られ、関東では千葉の旧三好村、茨城の旧八郷町に並ぶ三大聖地の1つとも言われている。
「有機の里」とも言われる小川町には「小川町有機農業生産グループ」があり、所属する40軒以上もの有機農家が当たり前のように農薬や化学肥料を使わずに農作物を栽培している。
その1軒である武蔵ワイナリーは、2年間の農業研修を経て(この間にブドウ栽培を開始)、2013年に農家になり2015年に会社設立という歴史が浅い中で、完全無農薬・無化学肥料のブドウ栽培に成功した。