埼玉県立川の博物館 大水車(埼玉県大里郡寄居町)。ウィキペディアより。

経営力がまぶしい日本の市町村50選(42)

一年中さくらに出会える町

 寄居町は、埼玉県北西部、大里郡にある人口3万4766人(平成28年4月1日現在)の町である。江戸時代に作られた『新編武蔵風土記稿』によると、「鉢形城落城の後、甲州の侍、小田原の浪士などより集まりて居住せし故の名なり」と記されている。

 その一方で、鉢形城・花園城をはじめとした多くの中世城郭が存在することを踏まえ、その起源は戦国時代までさかのぼるのではないかと考えられている。起源こそ様々だが、「寄居」は、「人が寄る町」「人が集う町」を象徴した歴史的な町である。

 また、寄居町は県内有数の桜の名勝地としても知られていたが、多くの桜は老木化が進み、かつての面影は薄れていた。そこで市民が立ち上がり、平成20(2008)年から他地域にない里山を生かした桜の名勝地「「300品種、1万本。一年中桜を見られる町」を目指し桜の植栽活動を始めた。

 春に咲く代表的な桜ソメイヨシノの樹齢は50~60年なので、樹齢の長い、いろいろな品種の桜を植えて、一年中桜を楽しめるようにしようという意図がある。現在、130品種、4000本近い桜を町内約120か所に植樹し、既に70数品種の桜が咲き始めている。

 さらには、埼玉県と寄居町は、30年前からホンダと誘致をめぐる協議を進めてきた。紆余曲折の末、3・11の東北震災以後、寄居町が地震に強い岩盤であることが分かり、生産工場に最適との判断で誘致に成功し、財政の健全化が進むこととなる(財政状況は末尾の財政事情コーナーにて紹介)。

人口減少の現状

 「人が集う町」という町名の由来や市民による桜の植樹活動、企業誘致の成功とは裏腹に、他の自治体同様に人口減少の課題を抱えていた。現に寄居町後期基本計画(平成24‐28年度)の重点的取組みとして、テーマの第1に「人口減少を食い止め定住の促進」を掲げている。

 以下に人口減少の現状にふれてみる。

1.人口動向

 人口減少は、大きく3段階に分かれ、「第1段階」は若年人口が減少し、老年人口が増加する時期、「第2段階」は若年人口の減少が加速し、老年人口が維持から微減へと転じる時期、「第3段階」は若年人口の減少が一層加速し、老年人口も減少していく時期と区分され、寄居町では、平成35(2023)年から「第2段階」に転じることが見込まれている。

2.合計特殊出生率の推移

 寄居町の合計特殊出生率は、2007年まで下降を続け、1998年以降は国の値、2003年以降は埼玉県の値を下回った。 2008~2012年では上昇に転じているが、依然として国および県の値を下回ったままである。

3.年齢階級別転出入の推移

 2005年以降は、20代後半から30代前半にかけての転出入について大幅な転出超過となっている。また転出した若者のうち、結婚や育児、高齢となった親との同居のため、町に回帰するケースの減少が伺える。

 さらには首都圏全域で地価が下落したことから新規住宅立地は都心に回帰し、かつては寄居町に移り住んできた、都内や埼玉県南部に職場のあるファミリー層が寄居町に移住しなくなっている。