武尊山の南斜面にある川場スキー場(ウィキペディアより)

経営力がまぶしい日本の市町村50選(38)

姉妹都市提携ではない縁組(結婚)

 川場村は群馬県北部、武尊山のふもとに位置する、人口3445人(平成27年2月)の村である。村の約88%は山林で占められており、利根川の源流である4本の一級河川など清流が流れる地に集落が開けたのが始まりとされる。

 産業の中心は農業で、こんにゃく、牛乳、果樹(りんご、ブルーベリー、ぶどう)、米などが主要産品となっている。

 豊かな田園風景が残る川場村は、野生動植物の宝庫である。森林ではカモシカやフクロウ、清流ではイワナやヤマメ、田んぼにはホタルなども生息する。

 澄んだ空気、清らかな流れ、豊かな緑に囲まれた川場村と世田谷区が「区民健康村相互協力に関する協定(縁組協定)」を締結したのは昭和56(1981)年。

 世田谷区民が、川場村を通じて、都会で望めなくなった豊かな自然に恵みに触れながら、地元住民と相互に協力して都市と山村の交流を深めていくことを目的とした「第二のふるさと」づくりである。

 全国的に縁組協定は非常に珍しいケースであり、要はこれから共同して生計を立てて、未来に向かってまい進していくことである。ともに相互の「まちづくり、むらづくり」に協力することを意味し、「ひと・もの・かね・しくみ(情報)・こころ」の交流を目指している。

 姉妹都市提携に見られる、都市の自治体が農山村に保養施設を単に作るというのではなく、都市と農山村がお互いの特長を生かし、分かち合って交流し、その中から心豊かな生活を見出していこうというものである。

ふるさとの喪失感

 その背景は、都会住民が抱くふるさとの喪失感や、自然への渇望、余暇時間の増大や健康増進に対する関心の高まりなどである。人間らしい生き方を取り戻す場としてふるさと的自然環境を農山村に求めたわけである。

 さらには都市が農山村に一方的に多くを求めるのではなく、双方が補い合って村おこしをするという縁組を基調に「第二のふるさと」づくりを目指そうと、昭和54(1979)年に世田谷区基本計画に区民健康村構想が位置づけられた。

 以下の候補地の評価項目に基づき、52の市町村から最も評価の高かった川場村に選定された。