しかし、北朝鮮はすでに自分たちが起爆装置の小型化に成功し、核ミサイル戦力を保有するに至ったことを、2013年の核実験の際にすでに宣言している。核ミサイル武装を今回初めて主張したわけではないのだ。
ただ、北朝鮮が言うことが事実かどうかは、誰にも分からない。諸外国も、中国やロシアも含めて、北朝鮮が核ミサイル戦力を実現化したとは明言していない。本当に分からないのだ。
日本政府は「核ミサイル配備のリスクが増大」
日本政府はどうみているのか。稲田防衛相は9月9日の記者会見で、「北朝鮮が、核兵器の小型化・弾頭化の実現に至っているという可能性は否定できない」と発言した。
ちなみに、日本政府の公式見解として『防衛白書』各年版(毎年7~8月に刊行)をみると、2012年版では「比較的短期間のうちに、核兵器の小型化・弾頭化の実現に至る可能性も排除できず、関連動向に注目していく必要がある」と、いまだ実現できていないとの見通しだった。
それに対し、2013年2月の3回目の核実験を経た2013年版では、「比較的短期間のうちに、核兵器の小型化・弾頭化の実現に至っている可能性も排除できず、関連動向に注目していく必要がある」と、すでに完成している可能性に初めて言及している。日本政府・防衛省は、2013年の核実験を経て北朝鮮が核ミサイル武装を自称したことを受け、それを否定はしていないのだ。
さらに、2014年版では前年版と同様の記述だったが、2015年版では「実現に至っている可能性を排除できない」との前年同様の記述の後に「時間の経過とともに、わが国が射程内に入る核弾頭搭載弾道ミサイルが配備されるリスクが増大していくものと考えられ、関連動向に注目していく必要がある」との記述が新たに書き加えられている。核ミサイルが完成している可能性は否定できないと言っているものの、日本を射程におさめる核ミサイルはまだ配備されていないとみているわけだ。矛盾している記述だが、つまりは「よく分かっていない」ということだろう。