エドワルドはデビーのビデオを紹介し、短い説明文を添えた。「女性エンジニアの少なさに心を痛めたデビーは、幼い女の子たちのためにすごく素敵なものを用意したんだ。これを見て僕は泣いちゃったよ」
アップワージーは、エドワルドのようなライターの個人的な驚きや感動を大切にしている。たとえ「すでに世に出た」話題であっても、ライターが感動したのであれば、多くの人々がそれを共有するに違いないと考えているからだ。既存のマスメディアや数々のウェブメディアが情報の新しさを競うのと比べ、アップワージーは情報の深さを売り物にするメディアだといえる。
エドワルドが紹介したデビーのビデオは200万人の読者によって共有され、多額の事業資金が再びデビーのもとに寄せられた。
社会変革を目的とする硬派集団
デビーの「工学系おもちゃ」は、発売後まもなく玩具小売りの大手「トイザらス」で取り扱われるようになり、通販のアマゾンでも売り上げ第1位のボードゲームになるなど、大成功をおさめた。新製品が次々と発売され、デビーの事業は完全に軌道に乗った。
だがアップワージーはデビーへの支援の手をゆるめず、その後も記事やツイッターなどを通じてプロモーションに協力している。工学系への興味に目覚めた少女たちが大活躍するテレビコマーシャルは、アップワージーを通じて1200万人が視聴した。
“心温まる話題”を提供するサイトが、なぜこれほど熱心に営利企業の後押しをするのか。それは、デビーのビジネスを“社会変革事業”と捉えているからだ。
元々アップワージーは、明るい話題で人々を楽しませることではなく、社会変革を目的として始められた。共同創立者には、リベラル系の風刺雑誌「オニオン」の元編集長や、2008年の大統領選におけるオバマ陣営のネット戦略担当者など、政治意識が高い人物がそろっている。