「MS-21」の完成予想図。最も売れているサイズの旅客機であるボーイング737やエアバスA320と同じクラスの旅客機であり、主翼や尾翼にカーボンを使用した意欲作である(イルクート社提供)

 ロシアが「ボーイング787」より進んだカーボン製主翼を作ったというタイトルは、事情を知っている人ほど違和感を覚えることが予想されるが、事実である。

 ボーイング787と言えば、ボーイングの最新型機であり、これまでアルミ合金で作られていた機体をカーボンで作るようになったことに最大の特徴がある。なお、そのカーボンは東レによって開発されたものであるため、日本でも話題になった。

 従来のアルミ合金より軽量で腐食が少ないカーボン素材を用いることで、燃費向上や機内の快適化などを実現したボーイング787は、世界の最先端を行く航空機であることに疑問の余地はない。

 一方で、ロシアの飛行機と言えば、一般には危ないイメージしかないのが実態であろう。本当に危ないのかは議論の余地があるが、ソ連時代に開発された旅客機が技術的に遅れ、燃費も劣り運行乗務員の数が多く必要なため、ボーイングやエアバスの航空機と比べ、商品としての魅力を失っていた。

 ソ連崩壊後は、旅客機の開発は停滞した期間が長かった。遅れていた技術は、さらに差をつけられてしまったと考えるのが自然である。

 それにもかかわらず、ボーイング787より優れたものを生み出し、内容がボーイング787の特徴であるカーボンだと言ったら、信じられなくて当然である。

 実は、専門家でも同じあり、ボーイングやエアバスの技術者が、ロシアのカーボン製主翼工場であるアエロコンポジットウリヤノフスク社を訪問した際、生産ラインを見て驚き、「本当にここまでのことをしているとは、見るまではとても信じられなかった」と言ったそうである。

 私もこの話を同社社長から聞いたときは、「正直、私も信じていませんでした」と思わず言ってしまった。