押し寄せるTPPの波、「攻めの農業」は実現できるのか

日本農家の創意工夫の意欲を削ぎ落とすな

2015.11.06(Fri) 白田 茜
筆者プロフィール&コラム概要

 国内の産地間で過当競争が起きているという指摘もある。農林水産省は、「商流が既に確立している国・地域に輸出が集中し、現地で産地間の過当競争や叩き売りが発生」しているとする。各県別のブランディング活動が自治体間競争を激化させ、輸出先でもパイを奪い合い、結果として「ジャパンブランド」のインパクトが弱くなってしまうことは、2014年3月の記事「目指すのはイタリア、『食の国』日本に必要な輸出戦略とは?」でも述べた。

 そうした中、産地間競争からオールジャパンの体制を築くために、ブロックや地域でまとまって輸出に取り組む動きが出てきた。共同輸送・混載で物流費を抑制する狙いがある。

 輸出先の求める基準をクリアするなど、輸出はノウハウの蓄積が必要であることはいうまでもない。検疫上の理由から日本産農畜産物の輸入が禁止されていたり、厳しい条件が課されていたりする国もある。こういう場合、科学的知見に基づくリスク評価をもとに、輸入解禁または条件緩和を相手国・地域に要請し、輸出条件について協議を行う必要が出てくる。

日本の技術力を売りにした海外展開

 日本の農業者が海外で生産・販売する動きも加速している。日本の高い技術と海外の安価な土地と人材を活用することで、現地の需要にあった農作物を生産するのだ。

 例えば、イチゴ生産を手がける農業生産法人「秀農業」は、2010年秋から中国・上海の農場を借りて、イチゴの現地生産に乗り出した。主な出荷先は現地に工場をもつ日系の製パン会社だという。

 さらには、海外で生産した農作物を他国に輸出する農業者もいる。日本の栽培技術で輸出先国の需要に合わせて海外で生産し輸出するのだ。

 こうしたグローバル展開をしている農業者にとっては、TPP発効でアジア圏内の関税が削減・撤廃されれば追い風になるかもしれない。

農業の大規模化で競争力は増すのか

 TPP大筋合意を受けて、企業の農地所有解禁や、生産者から資金を徴収して業界団体が販売促進活動などを行う「チェックオフ制度」の創設など、政府は新たな農業のあり方を模索している。中でも近年さかんに叫ばれているのが農地の大規模化だ。

 国は各都道府県に「農地中間管理機構」を設置し、地域内の農地の貸し借りを進め、やる気のある担い手へ農用地利用の集積・集約化を進めている。

 農地集約化には「ゾーニング規制や農地転用規制の強化が必要」との意見もある。ゾーニング規制とは、「農用地区域」とされた農地は農地以外のものにできないようにすること。日本では「農振法」により、指定された農用地区域では農地以外への転用が認められないことになっている。

 しかし、実際には、原則許可されないはずの農用地区域の農地を転用するために、申請により農用地区域から除外する手続が行われてきた。このため農地は宅地に転用されたり、公共施設が建てられたりしてきた。

 このような緩い運用が農地の転用期待を高めているため、農地転用の許可制度やゾーニングによる農用地区域の制度を厳格に運用するべきだという意見もある。

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