ようやくロシアで完全国産できるようになった新型輸送機「 Il-70MD-90A」(モスクワ航空宇宙サロンにて筆者撮影)

 今年9月末、ロシアがシリアへの空爆を開始したことで、再びロシアの軍事力に対して注目が集まっている。

 航空機の投下した爆弾が目標に命中する様子(外しているものも少なからずあるように見えるが)や、カスピ海上の艦艇から次々と巡航ミサイルが発射される様子など、ロシア国防省のリリース動画を見ていると、冷戦後に西側が行ってきた域外軍事介入の定番シーンをそっくりなぞっているかのような錯覚に襲われる。

 ロシアが旧ソ連圏外でこれだけの大規模軍事介入を行ったのはもちろん初めてのことで、世界的な注目を集めているのは当然であろう。

 だが、米国とは異なり、強力な外洋海軍や在外基地を持たないロシアが旧ソ連から遠く離れた地域に軍事介入を行うのは容易ではない。

 そこで今回、華々しい空爆や巡航ミサイル攻撃の裏で、地味ながら重要な働きを示したのがロシアの大型輸送機部隊である。

巨人輸送機「An-124ルスラン」

 なかでも目立ったのは、超大型輸送機「An-124ルスラン」で、頻繁にシリア入りして武器や物資を搬入し、黒海艦隊の輸送艦部隊とともにロシア軍の兵站を支えている。

 ルスランの最大貨物搭載量は150トンにも及び、この状態でさえ3000キロ以上の飛行が可能だ。貨物室は幅6.4メートル、高さ4.4メートル、奥行き36.5メートルもあり、たとえばロシア軍の主力戦車である「T-90A」なら3両を丸呑みできる。

 米国も巨人輸送機「C-5ギャラクシー」を保有するが、最大搭載能力や貨物室のサイズはルスランには及ばない。世界中を見回しても、これほどの巨大な空輸能力を持つのはルスランがほぼ唯一だ。

 「ほぼ」唯一と書いたのは、ルスランをベースとして開発されたさらなる巨人機「An-225ムリヤ」が存在するためだが、これはソ連版スペースシャトルであるブランの輸送用に1機だけ製造されたに過ぎない。

 これに対してルスランは、1980年代以降、55機ほどが製造された。