ちゃっちゃと切ることはできないザルの話

変わるキッチン(第16回)〜水を切る

2015.08.28(Fri)澁川 祐子

 これ自体は、1979(昭和54)年12月号の『暮しの手帖』に「野菜の水切り」として紹介されているぐらいだから、ずいぶん前から存在はしていた。しかし、よく見かけるようになったのは、輸入キッチン雑貨が手軽に揃えられるようになった2000年代くらいからの印象だ。

 ちなみに、欧米ではこのサラダスピナーはもっと古くから使われている。もともとは上が閉じられるようになっている専用の金網の「サラダカゴ」に葉物野菜を入れ、それを庭でぶんぶん振り回して水を切っていたというのだからおもしろい。それが進化して、ぐるぐる回せる構造にしたものがサラダスピナーの原型だ。

 また、パスタなどの湯切りにはコランダーと呼ばれる穴の開いた鉢のようなものが使われている。取っ手のついたものが多く、古くは陶器製だった。それほど隙間が多くないので、水がよく切れるのだろうかとも思うが、そこは食べ方の違いが影響しているのかもしれない。パスタはもともとソースに茹で汁を入れるくらいだから、多少水気が残っていてもかまわないだろう。一方、うどんや蕎麦に水気が残っていると、つゆが薄まってしまう。やっぱりザルは、どこでも食材に適した形状のものがつくられているのだ。

どんなザルにも一長一短あり

 こうしていまや、いろいろな水切り道具に溢れている、どれも一長一短だ。

 竹製は、私も1つ平らな丸い盆ザルをもっているが、竹自体が水分を吸ってくれるので水切れがいい。弾力性があり、酸やアルカリ、それに熱に強いのも竹製の特長だ。だが、目の間に細かいものが挟まると、洗うのに苦労する。また、きちんと乾かさないとカビたり傷みやすくなったりするところは要注意だ。

 ステンレス製は熱に強く、耐久性にも優れている。だが、パンチングで穴を開けたものは水切れが悪く、網目状のものは竹と同じくものが詰まると洗いにくいうえ、長年使っているとほつれてくることがある。

 そしてプラスチック製は、軽くて安いが、水切れが悪く、熱にも弱い。それに汚れがつきやすく、経年劣化も激しい。というわけでわが家にはプラスチック製はない。

 最後にサラダスピナー。これは便利かもしれないが、用途が限られ、場所を取るというのが最大の難点だ。

 こうしてみると、どんな用途にも使いやすく、洗いやすく、水切れ抜群というものはなかなか望めないものである。歴史を振り返ってみても、麺が登場したら茹で揚げザルが生まれ、生野菜のサラダを食べる地域ではサラダスピナーが生まれと、これまで料理によって最適な水切り道具が求められてきた。つまりは、狭い台所のスペースとにらめっこしながら、いかに自分の料理に合った水切り道具を揃えるかということでしかないのだろう。

 この原稿を書くにあたって、かねてから試してみたいと思っていたサラダピスナーを思い切って買ってみた。ぐいーんと取っ手を回すと、水しぶきがボウルの中で一斉に飛び散る。なかなか気持ちがいい。仕上がりもレタスに適度な水気が残りつつ、シャキッとしていた。どこにしまうかは思案中だが、いまのところ水切りの新たな助っ人を得たことに満足している。

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