ちゃっちゃと切ることはできないザルの話

変わるキッチン(第16回)〜水を切る

2015.08.28(Fri)澁川 祐子

 まず、「飯籮」の説明には、「籮(いかき)」の種類は数種類あり、すべて「以比加岐(いひかき)」と言うとある。さらに葉物類を洗うのにいい「丹波籮」(洗った野菜を入れるのに適した目の粗い「目ザル」のことか)、米を洗って水を切ったり、糯米を蒸したりするときに使う米揚げザル、味噌こしなどが挙げられている。

 一方、「笊籬」の説明では、「俗に言う饂飩(うどん)すくい」だとしている。だとすると、湯切りに使われる「水嚢(すいのう)」と呼ばれる取っ手つきのザルと考えていいだろう。ここで注目したいのは、銅でつくることもあると書かれていることだ。この時代にすでに金網のザルもあったことがわかる。

 また、笊籬と合わせて「煮出籠(にだしかご)」という、魚を煮るための道具も紹介されている。絵では取っ手つきの浅いザルが描かれているが、現在も魚の煮崩れを防ぐために使われているザルに、端を処理せず束ねただけの機能美を感じさせる「煮ザル」がある。

『和漢三才図会』における「飯籮」(右)と「笊籬」(左)の説明。なお、その間の「籃(かたみ)」にはザルとの読みもあるが、カゴのことを指している(所蔵:国立国会図書館)

 そのほか目の粗いもの、細かいもの、形も丸だけではなく四角や楕円など、深さのあるものから平らなものまで、さまざまなザルが全国各地でつくられてきた。材料も竹とはかぎらず、真竹が育ちにくい東北地方ではツルや樹皮を使ったものもある。生活に密着したものだけに、その土地でよく使われる食材や調理のしかたによって、さまざまなザルが編まれてきたのだ。

時代と食文化と共に進化するザル

 その後、明治時代になると、針金の普及にともない金ザルも使われるようになる。だが、竹などで編んだザルは太平洋戦争後しばらく経つまで優勢だった。

 当時の新聞などを読むと、年末の市にはザルを売る屋台が必ず立っていたことがわかる。ほんの60年くらい前までは、1年間使い古したザルから、青々としたザルに替え、新しい1年を迎える家庭が多かったのだ。「年始ザル」と言って、八百屋や魚屋が暮れに新しいザルをお得意さんに配って歩く風習もあった。

 高度成長期を迎えてプラスチック製が広く出回るようになり、やがてステンレス製も登場し、いつのまにか昔ながらの竹ザルは片隅に置かれるようになった。

 最近でいうと、水切り道具の注目株はサラダスピナーだろうか。蓋の取っ手を回したり押したりすると、ボウルの中にあるザルが回って、遠心力で野菜の水を切るという道具だ。

筆者所有のサラダスピナー。ハンドル式以外にプッシュ式も。容器の大きさ、形、材質はメーカーによっていろいろ
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