和え物やポタージュ、マッシュポテト。レシピに「裏ごし」という文字を見つけるとちょっと身構えてしまう。裏ごしは、なかなか面倒だからだ。
そもそも、こし器を持っていない。そこで、ステンレスのストレーナー(取っ手つきのざる)と木べらで格闘することになるのだが、金網にカスがこびりつくわ、周囲に汁気が飛び散るわ。片付けがひと苦労である。
しかも、どれだけなめらかに仕上げようとも、口に入ってしまえばみな一緒という気がどこかにある。「潰す」や「する」なら、網状の道具はいらない。だから、ふだんはほどほどに潰したりすったりでごまかして、よっぽど心と時間に余裕があるときしか、裏ごしレシピには手を出さないようにしている。
だが、「裏」の一字がなくなると、途端にハードルが低くなる。
茶こしを使ってお茶を抽出したり、ゆでた材料をざるで水切りしたりするのも「こす」の一種だ。それなら、ふだんやっている。
「裏」がつくか、つかないか。私にとってはかなり隔たりのある、この一字の違いに注目しながら「こす」という調理法を考えてみたい。