中華料理店に行くと、いつもご飯ものを炒飯にするか、丼ものにするかで悩む。卵のからんだパラパラとしたご飯もいいけれど、とろりとしたあんかけが沁み込んだ白米も捨てがたい。
しかも丼ものには、いろいろな種類がある。野菜や魚介、肉が載った具だくさんの中華丼もあれば、あんかけに包まれたふわふわのカニ玉が載った天津飯(または天津丼)もある。もっと味にパンチがあるものが欲しければ、麻婆丼。ボリュームを求めるなら、豚の角煮や牛バラ肉を煮込んだあんかけご飯もいい。
このように日本では、丼ものは炒飯と二分するくらい、中華のご飯ものメニューの代表格である。だが、本場中国でも同じかと言えば、ご飯にあんかけの具を載せるという食べ方は実は、王道ではないらしい。
中国には、いろいろなおかずをご飯の上に載せて食べる「蓋飯(ガイファン)」や、あんかけをはじめ汁気のある炒め物をご飯にかける「燴飯(ホイファン)」といった料理がある。だが、これらはあくまで手早く食事を済ませたいときの簡単メニュー。通常の食事では、ご飯とおかずを別々に食べるのが基本だ。
おまけに中華丼や天津飯に至っては、中国にはそもそも存在しない料理である。それにもかかわらず、日本の中華料理店では、必ずと言っていいほどメニューにあるのが謎に思えてくる。
同じ頃に東京と大阪で誕生?
その謎を解くカギは、中華丼や天津飯に共通する、「あんかけ」にあるのではないか。日本で中華の丼ものが根づくにあたって、あんかけという要素がいかに重要だったかは、天津飯のルーツをたどってみるとよく分かる。