順風満帆と思われたトルコ・エルドアン外交が曲がり角に来ている。
日本では詳しく報じられないが、最近のトルコ外交の変節は、中東レバント地域はもちろんのこと、欧州、湾岸中東地域にも大きな影響を与えかねない。
というわけで、今回の「一神教世界の研究」はトルコ外交の行方を取り上げる。
今トルコをめぐり何が起きているのか
いつもの通り、事実関係に関する各種報道を取りまとめてみた。すべては直近の総選挙でエルドアン大統領率いる与党が大敗北を喫したことに始まる、と言っても過言ではない。
最近の主な動きは以下の通りだ。ちょっと複雑なので、それぞれの事件につき、筆者の独断と偏見に基づく背景説明を付してみた。
●6月7日 トルコ総選挙で与党・公正発展党(AKP)が過半数割れ、クルド系の人民民主党(HDP)が躍進
●6月9日 ダウトオール首相が内閣総辞職の意向を表明
【筆者の見立て1】
現在トルコの有権者総数は約5700万人、今回も投票率は83.9%と極めて高かった。各党得票率はAKPが40.87%で過半数割れ、世俗派の共和人民党が24.95%、右派の民族主義者行動党が16.29%。
これに対し、クルド系でクルド労働者党(PKK)に近いとされる人民民主主義党は13.12%を獲得、これは大善戦だ。
2002年以来長期政権を維持してきたAKP、なかんずく最近独善的傾向が見え隠れするエルドアン大統領が抱いた危機感は尋常ではなかっただろう。特に、過去2年間、和解を演出しながらも巧みに封じ込めようとしてきたクルド勢力が総選挙で台頭したことはAKPにとって脅威と映ったに違いない。