Islamic State(以下IS)による日本人人質殺害事件からもう1カ月経った。この間日本のマスコミでは多くの「中東情勢に詳しい」専門家・評論家がISにつき様々な「見識」を開陳してきた。恥ずかしながら、かく言う筆者もその1人だ。だからこそ今も毎日自問している。我々は本当にISの実態を知っているのか?

ISのことは実は誰もよく分かっていない

シリアでキリスト教徒1000世帯が避難、ISの信者拉致受け

ISによるプロパガンダ映像〔AFPBB News

 そもそも日本人でISを正確に理解している専門家が何人いるかは疑問だ。

 突如生まれたこの「IS評論」なるマーケットに、アラビア語・非アラビア語の中東専門家からイスラム教に詳しい宗教研究者・歴史学者、さらには英会話すら危ない独立系ジャーナリスト・戦場カメラマンまで有象無象の「有識者」が参入した。

 あまり喋ると嫌われるぞと警告されたが、ここは真実を語らざるを得ない。

 申し訳ないが、中東が専門でない日本人国際政治学者等のIS評論は大半が再利用、すなわち外電と欧米・日本の中東専門家の言説をもっともらしく繰り返すだけだった。もちろん仕事だから、彼らも何か喋る必要があったのだろう。

 一方、中東専門家も玉石混交だった。