6月16~17日の大統領選決選投票はムスリム同胞団候補が「勝利」したようだが、現在エジプト内政は重大な危機を迎えているように思える。

エジプト軍最高評議会が立法権限掌握、大統領選はムスリム同胞団
が勝利宣言

エジプト大統領選挙で投票する人〔AFPBB News

 日本では増税法案、台風被害がトップニュースだが、この数日間CNN、BBCのトップはエジプト関連ニュース速報ばかり。欧米の関心は予想以上に高いのだ。

 この彼我の差はいったいなぜなのだろう。やはり日本人には中東に対する感受性が不足しているのか。

 今さらこんなことを言っても仕方がない。今回は現時点で得られている諸情報に基づき、大統領選後のエジプト内政を占ってみたい。(文中敬称略)

牙を剥いた軍部

 まずは事実関係を正確に理解しよう。以下は先週以来エジプト軍最高評議会(SCAF、Supreme Council of the Armed Forces)が決定・実施した一連の措置に関する報道を取りまとめたものだ。いずれもムスリム同胞団をはじめとする国内反政府勢力は猛烈に反発している。

 6月13日 法務大臣が戒厳令を再発令、これにより警察・公安部門ではなく、軍部が再び法執行と秩序維持につき直接責任を負うことになった。

 6月14日 最高裁判所が現人民議会の3分の1の議席選出手続きが憲法違反であると決定、これを受けSCAFは人民議会および憲法草案を起草するはずだった憲法評議会の解散と立法権限のSCAFによる掌握を宣言した。

 同時にSCAFは、SCAFも参画する新たな組織を設置し、同組織が起草した新憲法草案を国民投票により採択すること、さらには、同草案が一定期限内に起草されない場合SCAF自身が草案を起草することなども併せて決定した。

 6月17日 SCAFが一連の「憲法命令(constitutional decrees)」を下命し、大統領が持つ行政権限のSCAFによる掌握、新たな議会の議員選出は新憲法制定後とすること、新大統領が軍の同意なしに宣戦布告したり、軍の人事・予算を決定する権限を持たないことなどを宣言した。

 6月18日 SCAFが新大統領、軍高官を含む新たな「国家国防評議会」を設立すると発表した(ただし、詳細は不明)。