2013年1月に起きたアルジェリア南東部・イナメナス(首都アルジェから約1300キロ、リビア国境から約100キロ)にある天然ガス処理プラント1の襲撃事件から18カ月が経過し、9月1日、スタトイル(Statoil)は「ここ数カ月で襲撃前と同じ生産量まで復帰する2」と発表している。

多数の犠牲者を出したテロ後のセキュリティー強化策

赤い文字の場所がイナメナス

 2013年1月16日、10ヘクタールほどの巨大なイナメナスのガスプラントに、イスラム過激派グループ32人(国籍8カ国3)が襲撃し、わずか15分でプラントをコントロール下に置いた(その後テロリスト29人は殺害された)。

 石油・ガス産業セクターにおいて今までに例のない大規模な事件であり、40人に上る犠牲者(そのうち日本人犠牲者は10人)を出したこのテロ・人質事件は、リスク・危機管理について新たに考えさせられるきっかけになったともいえる。

 アルジェリアのある関係責任者は、この事件における被害額が20億ユーロ(約2700億円)ほどに上り、金銭的にも大損害であったことを述べている。

 外国人関係者からの批判の対象であったアルジェリア軍の対応については、「あの時アルジェリア軍が突撃しなかったら、テロリストは拉致した人々をサヘル地域(サハラ砂漠南縁)へ連れ込み、身代金要求を迫っていただろう。それにプラントが爆発した場合を考えたら、周辺60キロにわたる被害が出てしまっていただろう」と軍の突撃を正当化している。

 また、テロリストたちはリビアのデルナ(ベンガジの東)において訓練を受け、イナメナスのガスプラントについては、数カ月前に解雇された運転手から内部の詳しい情報を得ていたことなどが発覚した。

 スタトイルは事件後リポート4を発表し、その中で、「このような大事件に対応できるセキュリティー体制が整っていなかった」、そして「現地のアルジェリア軍に依存しすぎていた」と指摘している。

1 スタトイル(Statoil、ノルウェー)、 BP(英)、ソナトラック(Sonatrach、アルジェリア)の合弁事業。プラント建設は日揮が請け負う。アルジェリアのガス生産の11.5%を占め 、輸出ガスの18%にあたる。アルジェリアのガス埋蔵量は世界第8位。

2 イナメナスのガス生産量は現在1万6000BOE(石油換算バレル)/日だが、事件前は2万2000BOE/日であった。

3 アルジェリア人3人、チュニジア人11人、マリ人3人、ニジェール人2人、カナダ人1人、その他エジプト人、モーリタニア人。

4 The In Amenas Attack - Report of the investigation into the terroriste attack on In Amenas. Prepared for Statoil ASA's board of directors.(pdf).