ここで、欧米諸国の経済制裁がこの国に与えた影響を示す興味深いデータを紹介したい。
アジア経済研究所の工藤年博氏は、同程度の人口を擁し同時期に経済を開放するなど、1990年初頭まで多くの共通点を有していたミャンマーとベトナムを取り上げ、両国の重要産業である衣料品の輸出額の推移を通じてその発展過程を比較している(グラフ1)。
それによると、両国は1990年時点ではほぼ同規模だったものの、その後、ベトナムは2001年12月に米国との間で締結した通商協定を梃子に輸出を飛躍的に拡大。他方、ミャンマーは2003年7月からの「経済制裁」が打撃となって停滞を続け、2010年には輸出額にして実に20倍もの差が開いた。
さらに同氏は、ミャンマーが経済制裁開始後も天然ガスの輸出を中心に貿易を拡大していたことを指摘。その上で、衣料品に限らず両国の輸出入額全体にも目を向けると、2010年におけるミャンマーの貿易額は、ベトナムの10分の1に過ぎないことを明らかにしている(グラフ2)。
米国との関係如何により、両国のたどった道のりは見事に明暗が分かれたと言えよう。
「遅れ」が「伸びしろ」に
とはいえ、国際社会に復帰するための環境を着実に整えつつある新政権にとって、今後の新たな国づくりと経済発展の推進に向けた好材料となる見方もある。
ここで、再び先の表1を見ると、1982年に366億ドルだったタイは、1992年までの10年間で1094億ドルに、2000年に312億ドルだったベトナムは、2010年までの10年間で1036億ドルに、それぞれ成長を遂げている。
また、2000年代に入ってからのミャンマーの成長率がベトナムよりも高いことを踏まえると、2011年に514億ドルのミャンマーの名目GDPが今後10年以内に1000億ドルを超えることは、ほぼ確実だと見られている。