ミャンマー産コシヒカリの販売が先月からミャンマーで開始された。これはミャンマー出身の友人らが昨年9月にイラワジデルタ地帯で田植えを行い、日本の鶏糞を使用したり、他の畑の農薬が入らないよう工夫するなど、試行錯誤を重ねて実現したものだ。
日系商社など外資企業も注目するミャンマーの農業
日本人には関係ない話と思われるかもしれない。つまり、日本ではコメは「主要食糧」として政府が厳しく輸入管理し、植物防疫法に基づく農林水産省植物防疫所の検査(土や病害虫等の付着)、食品衛生法に基づく農産物の農薬残留検査等、輸入が決して容易ではなく、現状ミャンマー産のコメが日本の食卓に並ぶことは考え難い。
しかし、ミャンマーやアジア域内に駐在等で滞在する日本人(外務省の海外在留邦人数統計2013年10月時点: アジア地域34万人)、あるいはアジア最後の投資フロンティア、ミャンマーを訪れる日本人出張者にとっては、今後、現地でリーズナブルな価格の日本のコメが食べられるようになれば、朗報だ。
一方、ミャンマー農業の概況を見れば、コメ生産・流通の課題の1つに、精米所・倉庫が少なくコメの均一性が確保できないということがある。
ミャンマーコメ組合の会長・役員を中心に設立したMAPCOという農業法人が精米工場の建設を各地で計画しており、日系商社も有望な輸出用コメの精米所建設に資本参加してフィージビリティスタディを行っている。
その他、農産品のバリューチェーンを詳細に調べれば、まだまだ課題がありそうで、今後、そこに商機を求めて外資企業も参入してくるだろう。
今、(将来の日本も含め)アジア地域の食料の安定供給や増加する需要を想定し、ミャンマーの農業が注目されるところだ。そこで、本稿では、最近の筆者のミャンマーでの農村調査を振り返り、あらためて農業の実情と課題について考えたい。
ミャンマー農業の現場では問題山積み
ミャンマーは農業大国と言われる。GDPの約3割を農業が占め、人口の約6割が農業に従事している。全人口の約7割は地方に住み、就労機会はほとんどが農業関連だ。
ティン・セイン大統領率いるミャンマー政府は、農業・農村開発を経済改革の方針の1つに掲げている。具体的には、農業灌漑省は農民に対し資金援助(農機購入のための補助金や分割払い、短期運転資金等)を供与している。
しかし、生産現場では、粗悪な種子・肥料の問題、肥料の使い過ぎ、灌漑・精米機・倉庫等の未整備、低い農機普及率等、様々な問題が山積みだ。ミャンマーの友人らのコメ作りも、ここに至るまでの苦労は想像を超えるものであったようだ。