これまでの空爆状況

 オバマ大統領はなぜ限定的とはいえアメリカ地上作戦部隊の投入をも盛り込んだ最長3年の対ISIL戦争に踏み切ることになったのか。それは、これまで半年にわたってアメリカ主導の有志連合国により実施してきた空爆攻撃だけでは、ISILの壊滅はおろか勢力弱体化すら不可能と判断せざるを得なくなってきたからである。

 イラク領内のISIL支配地域に対する空爆は、アメリカ、フランス、イギリス、オーストラリア、カナダ、オランダ、ベルギー、モロッコの8カ国によって実施されている。また、シリア領内のISIL支配地域に対する空爆はアメリカ、ヨルダン、バーレーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、モロッコの7カ国軍によって実施されている。これら13カ国以外にもドイツ、デンマーク、ノルウェイ、ポルトガル、スペイン、ニュージーランド、トルコが、武器弾薬の供給や軍事顧問団による地上軍の訓練などの空爆以外の軍事支援を実施している。

 これらの有志連合国軍による空爆状況は、アメリカ国防総省による2014年末までの公式集計によると下記の通りである。

・作戦機出撃任務数:6981回
・爆弾等発射数:5886発
・偵察機出撃任務数:2164回
・輸送機出動任務数:1992回
・空輸物資総量:1万4555トン
・空中給油機出動任務数:4828回
・空中給油回数:2万8956回

空爆に要する莫大な費用

 ところで、このようなISIL支配領域に対する空爆にかかる費用は1日あたりどのくらいかかっているのであろうか?

 もちろん、日によって出撃する航空機の機数や投下する爆弾の数は異なるため一定ではないが、平均するとおよそ840万ドル(10億円以上)と言われている。

 この巨額に上る戦費は、出撃する戦闘機や爆撃機それに管制機や空中給油機などのランニングコストや、航空機から投下される爆弾の費用、艦艇から発射される巡航ミサイルの費用、それに航空母艦をはじめとして作戦に参加している艦艇の燃料費などが含まれている。

長距離爆撃のため戦闘機は空中給油が必要(写真:米空軍)