前回、若者を発奮させるには優秀な同世代との接点を持つことであると述べましたが(「企業が求める人材と学生のマインドには深い溝がある」)、海外へ出ようと思わせるには、国内の外国人留学生との触れ合いが一つのきっかけになることも多いです。その国へ関心が湧いたり、国内の安全な環境で過ごしていてはいけないと危機感を感じることにつながるからです。

 ですから、若者のアウトバウンド(日本人の送り出し)を促進するには実はインバウンド(外国人の受け入れ)の促進も欠かせません。そして、アウトバウンドが増え日本人の若者が渡航先国で日本を魅力的に紹介できればインバウンドも増えるという好循環が生まれるでしょう。

日本語人気はインバウンドを増やす好機

 ではインバウンドを増やすにはどうすればよいのでしょうか。(1)来日前のプロモーション、(2)来日中の魅力的な教育、(3)日本での就職、などフェーズに分けて考えられますが、今回は(1)の中でも日本語教育について考えたいと思います。

 というのも日本語を現地で学べば、日本への訪問・留学・就職などへ関心を寄せるようになるからです。

 国際交流基金の調査によると、2012年度における全世界の日本語学習者数は約399万人と、前回調査の2009年度より9.2%増えています。遡って1990年度では約98万人程度だったことを考えると、20年間で約4倍に増えたことになります。

 以前から日本語学習が盛んだった東アジアに加え、東南アジアで大幅に増加し、欧米でもアニメや音楽などのポップカルチャーを通じて日本語に関心を寄せる外国人が増えていることも一因です。

 同基金の調査結果でも、日本語学習の目的として最も多くの機関が挙げたのは「日本語そのものへの興味」(62.2%)であり、次いで「日本語でのコミュニケーション」(55.5%)、「マンガ・アニメ・J-POP等が好きだから」(54.0 %)、「歴史・文学等への関心」(49.7%)となっています。

 「将来の就職」(42.3%: 5位)、「日本への留学」(34.0%: 7位)などの実利的な目的より、日本について知りたいという動機が上回っています。インターネットの発達に伴い、世界中からポップカルチャーをはじめとする日本文化へのアクセシビリティが高まったことも大きな要因と思われます。

 また国・地域別の学習者数を見ると中国、インドネシア、韓国が群を抜いて多く、人口10万人当たりの数では、韓国、オーストラリア、台湾が上位であることが分かります。